第34話 『ダンダダン』7話と柳田国男
先日アニメ『ダンダダン』の7話を見た。
若い母親が幼い娘とアパートで暮らしている。
母親は仕事を掛け持ちし、さらに体を売って生活費を稼いでいる。
秘密の生活の気配が濃いが、かわいい娘は母親を慕い、母親も娘を溺愛している。
母親はバレエをやっていたらしく、娘にも教える。
母親は娘がステージに立つ日を夢見て赤いドレスを買う。
娘は喜んで狭い部屋でバレエを踊る。
ある日突然男たちがアパートにやってきて強引に娘を奪う。
おそらく母親はヤクザな夫から逃げていたが、それが見つかり娘を奪還されたのだ。
母親は男たちに殴られ全身傷だらけになる。
母親は必死に娘を追うが無情にも車は走り去り、娘は母親の元から永遠に去る。
絶望した母親はビルの屋上でバレエを踊り(この場面が天上的に美しい)、飛び降りて死ぬ。
死んだ母親は娘を求める悪霊となって町を彷徨う。
そしてついに探し求めていた娘(と母親が思っている)アイラに出会うのだが……
柳田国男に『山の人生』と題したエッセイがある。
柳田はそこで明治時代のこんな実話を紹介している。
美濃山中の小屋で炭を焼いて生活を立てる五十ぐらいの男がいる。
貧しい暮らしに妻は逃げ出し、今は十代前半の姉弟と三人で暮らしている。
ある不況の年、全然炭が売れず食うものもなくなり、困り果てて山へ帰ると姉弟が小屋で斧を研いでいる。
姉は父親に
「これ以上お父に迷惑をかけられない。この斧で自分たちを殺してくれ」
といって斧を渡し、入口の枕木に二人並んであお向けに横たわる。
男は「頭がくらくらして」斧で二人の首を打ち落としてしまう……
柳田国男は男の所業を「偉大なる人間苦」と評している。
「柳田が今回のダンダダンに出てくる母親を見たらなんというだろう?」
とアニメを見ながら思った。
やはり「偉大なる人間苦」と静かに称えると思うが、どうだろう。
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