里帰り

第1話

「さあ、並んで。並んで。」

「そこ、列を乱さない」

私は今、順番待ちをしている。

里帰りの順番待ち。

私は普段は、いわゆるあの世に住んでいる。

即ち亡き者。

このお盆の時期には、この世へと里帰りをする。

もちろん全員ではない。

希望者だけだが、子孫のあるものが当然優先される。

この世へは馬で帰る。

少しでも早く帰るためだ。

「さあ、どうぞ」

私の番が来た。

案内人が、私を馬に乗せる。

死んだとき、魂を誘ってくれたのもこの人だったかな。

馬にまたがる。

緑色の馬。

「里狩りたのしんで」

迎えの牛車が来るまで1週間。

ひさしぶりの、水入らずの時間を過ごしますか・・・