世界一推しを愛してる宮ヶ崎さん

有茶川みるく

第1話 プロローグ

宮ヶ崎家には宮ヶ崎杏柚実(みやがさきあゆみ)という一人娘がいた。

その娘は大変な思いをしていた。


幼少期は藤原優樹(ふじはらゆうき)という少年、東雲詩暮(しののめしぐれ)という少女、八津橋萌萌奈(やつばしももな)という少女、川峰結梨佳(かわみねゆりか)という少女の4人と出会った。

杏柚実にとってはその4人が生活の生き甲斐となっていた。

両親は仕事で忙しく、家では1人で遊ぶ。そんな寂しい生活が一気に裏返しになる事が杏柚実にとってどんなに嬉しかった事だったか。


しかしそんな暮らしは長くは続かなかった。

4人それぞれ家は少しずつ離れていた為、小学校は全員別々だった。それでも頑張って公園に集まり遊ぶ約束をした。

そのうち小学五年生の頃にはそれぞれ友達ができ、集まる事も無くなった。

杏柚実にはまだ友達がいなかった。


そんな杏柚実に新しい友達ができた。東雲紫暮(しののめしぐれ)と言った。

杏柚実は当時、漢字を知らずもう会えなくなっていた詩暮と会えたのかと思った。だから今まで起こった全ての事や悩み事を全てぶつけた。そこで紫暮は大体の状況を察し、自分は“詩暮”に装った方が良いなと思ってしまった。


その翌日、紫暮はアニメを好きになると良いと勧めた。そしたら毎日が幸せになるよ、と。

杏柚実がMu’sと出会ったのはその日だった。

とりあえず今流行ってるアニメを調べようとネットを開くと丁度新着で「〇〇プロデューサー、アイドル結成!」とあった。

あいにくそのプロデューサーは名が知られていなかったようで全く盛り上がらなかった。

それが丁度良かったのか、杏柚実はその出来たアイドルを調べてみた。出来たばかりなのでさすがに情報はなかった…が、これだけあった。

「9月12日、新曲発表!!」

それは一週間後の事だった。

杏柚実は心待ちにしていた。


それからはというと、杏柚実はMu’sに釘付けになり、毎日新情報が更新されていないかチェックした。

その後一年経たずで有名になったMu’sはファンクラブを立ち上げた。杏柚実は会員番号一番だった。

嬉しくて仕方がない様子でその日は一日寝られなかった。


しかし、そんな杏柚実にまた不幸が降り注ぐ。

紫暮が転校したのだ。

紫暮がいなかったら好きになるはずもなかったMu’s。

充実した生活が送れなかった。

杏柚実は悲しみながらも相変わらずMu’sを応援し続けた。



そして時は中学一年生。

何とまさかの5人揃う事ができた。

杏柚実は紫暮を詩暮と勘違いしたままなので、久しぶり!私、もう幸せだよ!と声をかけたが返事は予想を反するものだった。

杏柚実は頭の整理が追いつかないままそのことを忘れていった。



そしてそのまま高校一年生へと成長していったのだったー。

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