第7話 友達とのキャッチボール

雄大の成長は、家庭内での練習だけに留まらず、幼稚園でも自然と広がりを見せていた。ある日、雄大はいつものように父親との練習を終えた後、翌日の幼稚園での出来事に胸を膨らませていた。最近、クラスの友達たちが雄大の持つバットやグローブに興味を持ち始めていたのだ。


翌日、幼稚園で遊びの時間が訪れると、雄大は自分のグローブを持って園庭に向かった。すると、同じクラスのケンタとリョウが駆け寄ってきた。


「雄大、そのグローブかっこいいね!今日は一緒にキャッチボールしようよ!」


ケンタが言うと、リョウも「僕もやりたい!」と興奮気味に声を上げた。雄大は嬉しくなり、二人にグローブを見せた。


「もちろん!一緒にやろうよ!」


三人は園庭の端っこで、初めてのキャッチボールに挑戦した。雄大は父親との練習で覚えたことを思い出しながら、ケンタとリョウにボールを投げた。しかし、二人はまだキャッチボールに慣れておらず、ボールを受け取ることができなかった。


「うーん、難しいな…」


リョウがボールを地面に落とすたびに悔しそうな顔をしていたが、雄大はそれに気づき、「大丈夫だよ、最初はみんなそうだよ」と励ました。


「コツは、ボールをよく見て、グローブで包み込む感じだよ。」


そう言って、雄大はゆっくりとした動作でお手本を見せた。二人はそれを見ながら、少しずつボールをキャッチする感覚を掴んでいった。雄大も二人と一緒に遊ぶことで、自分の中にある「教える楽しさ」を感じ始めていた。


やがて、ケンタとリョウは少しずつキャッチボールができるようになり、三人で投げ合う時間が増えていった。その度に、雄大は嬉しそうな顔をして、「やったね!」と声を上げた。


キャッチボールが終わった後、三人は園庭に座り込んで休憩した。ケンタがぽつりと呟いた。


「雄大ってすごいね。どうしてそんなに上手いの?」


雄大は少し照れくさそうに笑いながら、「毎日、お父さんと練習してるんだ。最初は僕も全然できなかったけど、少しずつ上手くなったんだよ」と答えた。


リョウはその言葉に感心し、「じゃあ、僕たちも毎日練習しようよ!」と言った。雄大はその提案に頷き、「一緒に頑張ろう!」と力強く返した。


その日、雄大は友達とのキャッチボールで新しい楽しさを見つけた。そして、自分だけでなく、周りの人と一緒に成長していくことの大切さを感じた。幼いながらも、彼の中で「仲間と共に夢を追いかける」という意識が芽生え始めたのだった。


夜、家に帰った雄大はその日のできごとを父親に話した。父親は息子の成長を感じながら、「友達と一緒に楽しめて良かったな」と優しく声をかけた。その言葉に、雄大はさらに胸を膨らませ、明日もまた友達とキャッチボールをすることを楽しみに眠りについた。

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