ホラーサイトの管理者
天川裕司
ホラーサイトの管理者
タイトル:ホラーサイトの管理者
俺はシナリオライターをしている。
主にホラーサスペンス、意味怖、ヒトコワ、
本怖系のシナリオばかりを書いてきた。
初めはウェブ記事をずっと書いてきたのだが、
ある時を起点に「シナリオライターをやってくれ」
とクライアントから何度も頼み込まれ、
最初は本当に嫌だったけど、そのうち書き方を覚え、
何とかニーズに応えられる
シナリオをずっと書いてやったのだ。
それなりに儲ける事はできた。
「これならこれで良いかなぁ」
なんて思っていたその矢先、
俺にどうしてもシナリオを書いてほしいと
頼み込んできたそのクライアントは、
だんだん連絡が疎遠になり、
やがて自然消滅する形で俺の前から消え去った。
「いつでもご連絡をお待ちしています」
そんな内容のメールをいくつ彼に送ったかしれない。
でもやっぱり連絡は帰ってこず、
俺は別のクライアントのもとで原稿を書く事になる。
だが、そこからなんだか不思議な現象に見舞われたのだ。
俺がつくクライアントはすべて、前のクライアントと同じく、
ある一定の時間が過ぎると必ず俺の前から消え去ってゆく。
初めこそ「飽きられたのかなあ」なんて
クライアント全員の無責任さに腹立たしさを覚えていたが、
めちゃくちゃ売れてるサイトを
運営しているのにかかわらず
クライアントが消えると言うのは、
何か、どうでも納得できない不思議があるように思った。
クライアントはすべて、
自分のYouTubeサイトを持っている。
そこでシナリオ原稿を動画に変え、アップするのだ。
YouTubeを運営管理する以上は、
視聴回数が軒並み伸びて、登録者数が
爆発的に増えてくれることを誰もが祈るだろう。
俺がついたクライアントはほとんどすべてが、
爆発的な人気の伸びを誇るサイトの管理者たち。
つまりそこでYouTubeの運営を辞めるなんて
普通から見て考えられない。ありえないことなのだ。
「…なんか抜き差しならない用事でもできたんかなぁ」
そんなことも当然考えた。
でも不思議。
俺にシナリオを依頼してからわずか2週間後、
1週間後、3日後に俺の前から消え去るなんて、
どう考えても普通じゃない。
そのクライアントの中には、向こうから
「どうしてもシナリオを書いて下さい!」
と頼み込んできた彼らも居たのだ。
つまり俺のシナリオに飽きるにしても早すぎる。
何かあるんじゃないかと思い始めた。
するとそれから数日後のニュースで、
信じられない事件が飛び込んだ。
「え?こ、これって」
俺を担当してくれていたクライアントの1人が、
ビルの屋上から身を投げてこの世を去っていた。
彼と俺はパソコンを通して出会ったのだが
それなりに信頼関係を築くことができ、
お互いのプライベート情報まで交換できるほどの
親密な関係になっていた。
その上でお互いの顔写真も交換しており、
「これから共存共栄でやって行きましょう」
なんて、それなりに将来を約束し合った仲。
だからそのニュースで、
彼の顔写真が出た時は本当にビビッた。
信じられなかった。でも事実。
それからだ。
立て続けに似たような事件が起きたのだ。
「あのクライアントも、このクライアントも…」
みんなよくよく調べてみれば、
以前に俺にシナリオ原稿の依頼を
持ち込んできた人たち…そのクライアント。
実はみんなホラーサスペンス系の動画サイト、
意味怖系・ヒトコワ系・本怖系の動画サイトを運営し、
それを管理していた人たちだった。
その彼らが皆、似たような事件に巻き込まれ
調べてみると似たような経緯を通り、
そして同じ結末…この世を去ると言う結果に落ち着いている。
そしてもう1つ、よく考えてみれば少し不思議だったのが、
彼らが運営していたサイトがそのままになっていること。
ほとんどどの動画も10万回から
50万回ほどの視聴回数を稼いでおり、
チャンネル登録者数にしても1万人から10万人、
多いので100万人を突破しているサイトもある。
まぁこれは管理者が放置しているとも見て取れ、
「これだけ稼げる動画を用意すればもう良いだろう」
なんてその時点でライターを足切りにし、
自分の保身に徹したと見て取れなくもない。
でもその彼らは先日のニュースであった通り、
皆すでにあんな形でこの世を去っているのだ。
どのサイトも何の変更もなく
まるで置き去りにされたかのようにウェブ上にあるが、
少し見方を変えると、
それだけ売れてるサイトを何の活用もせず、
ただ放置しているというのが
少し気になる程度に解せないものだ。
中には会社を立ち上げて、
複数人で管理してるクライアントも居たから。
「もしかして、こんなホラーサイトばかりを運営してたから、何かに呪われたのか…?」
「いやいやそんな事あるはずがない」
と思い返してみても、やはりあの時点で
そんな売れてるサイトを一切放棄して、
もっと売れようと原稿依頼をするのが
普通であるのにそれを誰にもしておらず、
ただ何の変哲もなく数ヶ月・数年前から
サイトのトップ画面が全く変わってない
と言うのはやはりどう考えてもよくわからない。
サイトの絵面が変わってないと言う事は、
本当に誰にもシナリオ原稿の依頼をしていないと言うこと。
あれ以来、新しい動画が1つもアップされていないのである。
売れれば「ここぞ!」とばかりに欲をかき、
もっと売れたいとする現代人の商魂に思いを馳せれば、
その点からもこの現状は少し違う気がする。
やはり抜き差しならぬどうしようもない事情が
彼らの身に降りかかっていたのか…?
なんとなく、そう考える方が
妥当な気もしてきた今日この頃である。
動画はこちら(^^♪
https://www.youtube.com/watch?v=jlBlwp9XNZM
ホラーサイトの管理者 天川裕司 @tenkawayuji
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