第7話 持ち主定める不気味なヨーヨー
「ヒーヒッヒ……。そうだねえ。わしも嬉しいってものさ。……それじゃあ、お代はいただくとしようね。嬢ちゃんには、これを」
レインはようやくカルトンに乗った100円玉を取り、こよりをひとつ取り出した。
「ありがとう。ねえ、ミコトはどのヨーヨーがいちばん素敵だと思う?」
こよりを渡された案理は、肩を回して準備体操のような動きをしてから、しゃがみ込んだ。
「どれもこの世にふたつとない品だもの。ぼくにはどれも素敵に見える。…………でも、案理。レインがこれから話す注意事項を最後まで聞いてほしいんだ」
ヨーヨーを物色中の案理を制する声が凛と響く。
「……ええ。わかったわ」
「ここに浮かぶヨーヨーたちは、見た目が変わっているだけじゃあないのさ。『持ち主に相応しいと認めた者を呼ぶ』なんて特徴があるんだよ」
感情の映り込まないガラス玉めいた瞳は、案理をひたと見据えていた。
(宝石のようなものかと思ったけれど、実際に私を呼ぶ声が聴こえた。どういう仕組みかはわからないけれど……。私は『相応しい』と認められたということ……)
「では、私はこの中のどれかに認めてもらえた……ということでいいのね?」
「そうだよ。普通は『挑戦者が好きなヨーヨーを選ぶ』んだろうけど、ここでは逆なのさ。『ヨーヨーが持ち主を
「それだけ
案理は驚き、即答したミコトの顔を二度見した。先ほどの悲痛な叫びを実際に耳にしたかのような言い方だ。
「ミコトにはさっきの声は聞こえていないのよね?」
「もちろん」
「嬢ちゃんは、今も声が聞こえているかい?」
「いいえ。周りの音に負けてしまっているみたいで、すっかり聞こえなくなってしまったわ。だけど、なんだかとてもつらそうな声を出していたから、出来ることなら早くすくってあげたいのだけど……」
睫毛の奥の冷静沈着な瞳は、強い使命感に燃えていた。
「そうかい、そうかい!
レインがもう一度指を鳴らすと、案理の聴覚は再び調整された。
(プールのあとに耳に水が入ってしまったときみたいだと思っていたけれど、水中に潜ったときの音の聞こえ方にも似てる……)
「さあ、これで今の嬢ちゃんに必要な音以外は届きにくくなったはずだ。声を辿って、あんたが
レインの声を遠くに聞きながら、案理は目を閉じ、声が聴こえてくるのを待った。
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