第5話 ご縁を結ぶよ不思議なヨーヨー
「いえ! 構わないわ。聞いていた通り、ここでは可愛らしいヨーヨーが
水面を覆い尽くさんばかりに浮かべられたヨーヨー。描かれているのはすべて小洒落た洋館のようで、それらが寄り集まった光景は、ひとつの街のようだった。
「そうだろう、そうだろう……! ここでしか手に入らない限定品さ。なんたって、このばばあがひとり夜なべしてこしらえているんだからねえ」
レインは得意そうに踏ん反り返ったが、見た目のおかげか少しも嫌味な印象はない。
「こんなに繊細な絵を、ひとつひとつ手作業で?」
「そうだよ。水風船に家を描いて、
(中身って水よね? 説明する必要はあったのかしら? ……まあ、私が知らないだけで、意外と大変な作業なのかもしれないし、気にすることでもなさそうね……)
ぼーっとヨーヨーを眺めていた案理だが、質問のために店主に視線を戻した。
「全部で何通りのデザインがあるの?」
「似ているものはあっても、同じものはないねえ。なにせ、
「まあ……! ものすごく手間がかかるでしょうに、本当にこのお値段で大丈夫なのかしら。もっと取ってもいいのではないかと思うのだけれど……」
レインの発言の不可解な点にも気付かず、案理は値段表示を指して尋ねた。そこには『400円(※おひとりさまにつき、おひとつまで)』とある。
「儲けたくて始めたわけじゃないからねえ。
「まあ、そうなの。童話にたまに出てくる、優しい魔女みたいね?」
「確かに! 近いところはあるかもね」
それまで黙ってふたりの会話を聞いていたミコトが、軽やかに笑った。
(…………屋台の名前が少しだけ引っかかるけれど……)
一歩引いた案理は、視線を屋台上部に走らせる。そこでは、小ぶりなサーカステントの意匠にそぐわない行書体が堂々たる威容を示していた。
(『
「
「!? どうして私の考えていることがわかったのかしら?」
後ずさりする案理を見て、レインは満足そうににんまりと笑みを広げた。
「それだけ『わからない』という顔をしていたら……ねえ?」
「レインも勘の鋭いほうだけど、案理は案理で顔に出やすいほうだものね」
「おや、そうなのかい?」
「ぼくの腕の中では、とりわけ…………ね? そうだろ?」
ミコトがウインクを飛ばせば、案理はぎょっとして彼女を仰ぎ見た。
「あ、あまりからかわないで頂戴……!!」
「ヒヒヒヒッ。素直なのは、いいことさね。あまのじゃくはいつまで経っても
レインは詩の一節を諳んじるように言い、それきり口を噤んだ。
「とりあえず、先払いでいいわよね? 今日はこのために来たんだもの」
「……ああ、まだ説明してなかったかい。このヨーヨーはね、代金を払ったからといって、みんながみんな
案理はカルトンに100円玉を4枚乗せたが、レインは微動だにしなかった。
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