第40話 情報の受領
星々が遠くで鈍く光り、銀河の果てまで冷たく広がっていた。エニグマ号は、その静寂の中を滑るように進んでいた。ゼノ・オスカーは、手にしたデータパッドをじっと見つめ、商人連合の使者からもたらされた情報を解読していた。
「これが、銀河の未来を左右する情報なのか…?」ゼノの声は静かに響いたが、その言葉の奥には疑念と重圧が潜んでいた。
隣に座るリラ・ナイトシェイドがディスプレイに目をやりながら答えた。「それだけの価値があるってことよ。連合がわざわざ命を懸けて手に入れたんだから。」
ゼノは黙ってホログラムを操作し、データを表示させた。そこに映し出されたのは、銀河の暗部に隠された悪名高い施設――**イリディウム監獄**。監獄の冷たい金属の構造が、まるで銀河の闇そのもののように映っていた。
「この監獄にいるのがカサンドラ・ヴェイル。元帝国の情報将校だ。彼女が持っている情報は、エテルニス帝国の残党が銀河全体を支配する計画の鍵だ。」ゼノの声には、一切の躊躇がなかった。
ケイド・ローガンが、無言で武器を磨きながら顔を上げた。「あの監獄から生きて出られた者はいないと聞いている。それに、俺たちが潜入しても、すぐに奴らに見つかるだろう。」
ゼノはホログラムの構造図を指差しながら、冷静に説明を続けた。「確かに、正面から入ればそうなる。しかし、連合が渡してきた情報には、内部からの協力者がいると記されている。潜入の成功率は0じゃない。」
ケイドは一瞬黙り込んだが、やがて苦笑を浮かべた。「ゼロじゃないなら、やる価値はあるか。」
ナヴィ・エルドレッドは、ブリッジの隅でセンサーを操作しながら、監獄のデータをスキャンしていた。彼女の顔は険しかった。「リラ、ここに何かがある。監獄の内部に、もう一つの構造体がある。これ…ただの刑務所じゃない。何かもっと恐ろしいことが行われている。」
「何か?」リラが眉をひそめてモニターを覗き込む。
ナヴィは深く息を吸い、ゼノに向き直った。「それが何かはまだ分からない。でも、この監獄全体がただの施設じゃないことは確かよ。」
ゼノはしばらく黙った後、力強く頷いた。「いいだろう。潜入してその正体を突き止める。そしてカサンドラを救出する。彼女が持つ情報が、銀河全体の未来を左右する。もう後戻りはできない。」
ブリッジに張り詰めた緊張感が漂う。ゼノの指示に応じて、エニグマ号は徐々にイリディウム監獄へ向けて進路を取った。黒い宇宙の闇の中、監獄はまるで銀河の心臓のように脈打ち、ゼノたちを待ち受けていた。
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