第14話 未来の影
エニグマ号は、奇妙な歪みの中心へと近づいていった。船内の緊張感はこれまでにないほど高まり、クルーたちは未知の危険に備えてそれぞれの持ち場で準備を整えていた。ゼノ・オスカーは、歪みが持つ潜在的な危険性を深く理解しつつも、そこに何が待っているのかを突き止めるために進む決意を固めていた。
「ヴァーゴ、歪みの中心までの距離はどのくらいだ?」ゼノが尋ねた。
「約500キロメートルです。エネルギー反応はさらに強まっており、次元の揺らぎが増加しています。」ヴァーゴ・キンタロスが冷静に応答した。
「シールドを最大出力にして、進路を固定しろ。どんな事態にも対応できるように、全員警戒を怠らないように。」ゼノは指示を飛ばし、クルーたちは一斉に動き出した。
エニグマ号が歪みの中心に接近するにつれ、周囲の空間が歪み始めた。船内のモニターには、時間や空間が錯綜し、過去と未来が交差する不思議な光景が映し出されていた。クルーたちはその異常な現象に驚愕しつつも、冷静に状況を見極めていた。
「何が起こっているんだ…?これはただの歪みではない。」ケイド・ローガンが戸惑いの声を上げた。
「おそらく、この歪みは時間と空間が交差するポイントだ。装置の起動によって引き起こされた副作用かもしれない。」リラ・ナイトシェイドが端末を操作しながら答えた。「過去と未来がこの場所で混ざり合っている可能性があります。」
その時、エニグマ号のブリッジに突然、別の映像が映し出された。それは、未来の銀河の様子を示しているかのような光景だった。画面に映るのは、荒廃した星々と崩壊した文明の痕跡、そして支配的な異星種族の姿だった。
「これは…未来の銀河か?」エリサ・トールが不安そうに言った。
「どうやらそうだな。もしこの歪みが何らかの形で未来を映し出しているとすれば、これは我々が回避すべき最悪の未来の一つかもしれない。」ゼノは画面を見つめながら答えた。
「未来がこうなってしまう理由は何だ?」ケイドが問いかけた。
「再生装置が誤って使われたか、あるいはその力が制御不能になった結果かもしれない。」リラが仮説を述べた。「もし我々が正しい選択をしなければ、この未来が現実のものとなる可能性がある。」
ゼノは深く考え込んだ後、クルー全員に向けて言った。「この未来を回避するためには、我々が再生装置の力を正しく理解し、制御する必要がある。私たちはここで見たものを教訓にしなければならない。」
「つまり、この歪みの中で得られる情報をもとに、今後の行動を慎重に決めるということか。」ケイドがゼノの意図を理解し、応じた。
「そうだ。そしてこの歪みが示す未来が、必ずしも避けられないものであるとは限らない。我々がどのように行動するかにかかっている。」ゼノは決意を込めて答えた。
その時、ブリッジのモニターに再び変化が起こり、今度は異なる未来の映像が映し出された。それは、銀河が平和に統治され、人々が共存している未来の姿だった。ゼノはその光景に希望を見出し、全員に向けて語りかけた。
「この未来を実現するために、我々はこの歪みの中で答えを見つけなければならない。これが、銀河を救うための唯一の方法かもしれない。」
クルーたちはゼノの言葉に深く頷き、それぞれが新たな決意を胸に秘めた。エニグマ号は未来の影に立ち向かい、新たな試練に挑むため、再びその航路を進み始めた。銀河の運命を握る戦いが、今まさに始まろうとしていた。
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