第21話
マサは次の町へ向かう途中、小さな飛行場に差し掛かった。そこには数機のセスナが並んでいて、マサは興味深そうにそれを眺めた。旅の疲れを感じていた彼は、しばしの間、飛行機を見て息抜きしようと考えた。
飛行場の管理人らしき年配の男性がマサに気づき、近づいてきた。「セスナに興味があるのかい?」彼は親しげに声をかけてきた。マサは頷き、「ちょっとだけね。飛ぶのを見たことがなかったから」と答えた。
その時、セスナの操縦席にいた若い女性が出てきて、管理人に何か話しかけた。彼女はナズナの花束を持っていて、それを機内に丁寧に置いた後、マサに気づき、笑顔を見せた。「これから飛ぶんですけど、興味があれば一緒にどうですか?」と誘ってきた。
マサは一瞬迷ったが、好奇心に勝てず、その提案を受け入れた。セスナに乗り込むと、エンジンが轟音とともに始動し、飛行機はゆっくりと滑走路を進んだ。空に舞い上がると、地上の風景が小さくなり、マサは一瞬だけ日常の喧騒から解放されたように感じた。
空の旅は短かったが、その時間はマサにとって貴重な休息となった。飛行機が着陸すると、彼は感謝の意を込めて女性に別れを告げ、再び旅を続けることにした。
しばらく歩くと、マサは人里離れた小さな集落にたどり着いた。そこには昔ながらの農家が点在していて、軒先には屠蘇や漬物が並んでいた。マサは家の前に座っている老人に声をかけ、少し話をすることにした。
「この辺りは静かでいいですね」とマサが言うと、老人はゆっくりと頷き、「ああ、静かすぎてね。最近はゴミ収集車もあまり来ないから、生ゴミの処理に困っているくらいだ」と笑いながら答えた。
マサは老人と話しながら、遠くの森にある古びた屋敷に目を向けた。老人によれば、その屋敷にはミイラ男の噂があるという。昔、何かの儀式でその家に祀られた男が、今でも屋敷に潜んでいるというのだ。
興味を持ったマサは、老人から屋敷の場所を聞き出し、そこへ向かうことにした。夕暮れ時、マサはその屋敷に到着した。入り口は閉ざされていたが、リモートワーク用に改造されたらしい小さな部屋の窓から、中を覗き込むことができた。
屋敷の中はひんやりとした空気が漂い、どこか不気味な雰囲気を醸し出していた。氷が詰まれた箱が置かれており、マサはそれを覗き込んだ。中には何も入っていなかったが、何故か冷気が彼の肌に張り付くような感覚を残した。
さらに奥に進むと、屋敷の一角にあった古びた祭壇が目に入った。そこには屠蘇の瓶が置かれ、かすかに香りが漂っていた。その時、突然背後から物音が聞こえた。マサが振り返ると、そこには古びた包帯に覆われたミイラ男が立っていた。
ミイラ男は一歩一歩、ゆっくりとマサに近づいてきた。冷たい空気がさらに冷え込む中、マサは思わず後ずさりした。ミイラ男は何かを囁いているようだったが、その言葉は聞き取れなかった。
「こ、これは何なんだ?」マサは恐る恐る尋ねたが、ミイラ男は無言のまま近づき続けた。
しかし、その時、屋敷の外から大きな雷鳴が響き渡り、窓ガラスが震えた。雷鳴とともにミイラ男の姿が消え、まるで幻だったかのように屋敷は静寂に包まれた。
恐怖とともに屋敷を後にしたマサは、再び旅を続けることに決めた。彼の心には謎が残ったままだったが、それ以上追及する気力はなかった。マサはただ、この不気味な体験を忘れようと、ひたすら歩き続けた。
マサは新しいドラマを考えた。
「さらばあぶない恋人」は、1980年代の東京を舞台にした、サスペンスとロマンスが交錯するハードボイルドなドラマです。ストーリーは、表向きは一流企業の敏腕社員として活躍する一方で、裏では国家に対する陰謀を暴くため、闇社会に潜入している主人公・真田隆一の物語を中心に展開されます。
### プロット
真田隆一(演:高倉健)は、表向きは広告代理店のエリート社員。しかし、彼のもう一つの顔は、国家の機密情報を守るため、闇社会の犯罪者を追うエージェントです。彼は普段の生活の中で、冷静で謹厳実直な性格を見せながらも、任務においては冷酷かつ非情な判断を下します。
ある日、隆一はある犯罪組織に潜入し、そこで美しいが危険な謎の女性、川村恵(演:中野良子)と出会います。恵は組織のリーダーであり、冷徹で誰にも心を開かない女性ですが、隆一との接触を重ねるうちに、次第に彼に惹かれていきます。しかし、隆一には任務上、彼女を欺き、組織を壊滅させる使命があるのです。
隆一と恵の間に芽生えた感情は、互いに信じられない関係の中で揺れ動きます。隆一は恵がただの犯罪者ではなく、背後にある壮大な陰謀に巻き込まれていることを知り、彼女を救おうと決意しますが、その矢先、任務のためには彼女を裏切らざるを得ない局面に追い込まれます。
ドラマは、真田隆一が最終的に国家の安全と恵との愛の間でどのような決断を下すのか、そして恵が彼の正体を知った時、二人の運命がどうなるのかを描きます。舞台となる80年代の東京の街並みや、緊迫感のあるアクションシーン、そして切ない愛の物語が視聴者を魅了します。
### キャスト
- **真田隆一**: 高倉健
- **川村恵**: 中野良子
- **真田の上司(エージェント)**: 渡瀬恒彦
- **犯罪組織のリーダー**: 松田優作
- **恵の右腕**: 田中邦衛
- **情報屋**: 萩原健一
### 主題歌
主題歌には、時代を象徴するバラード「涙の街角」を起用。哀愁漂うメロディが、ドラマの持つ独特のムードを際立たせます。
「さらばあぶない恋人」は、愛と裏切りが交錯する中で、冷酷な現実とロマンチックな感情がぶつかり合う、見応えのあるドラマシリーズです。
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