虎松保育園児編3話 「心真地ちゃーん」


  「大川目沢が勝ったわよ」

 

 「中津軽が負けるとはね」


 「晋三使って、今の戦法で、私達も中津軽に勝てるかしら」


 「いや、無理でしょ」

 

 「中津軽がいつも通りに幻を使ってきても」

 「無理無理」


 観戦していた園児達がざわめく。


 そりゃあ、僕はそんなに強いわけじゃない。

 近所の同年代で少し強いぐらいだ。


 けれど、この敗北は。


 「中津軽、俺の勝ちだな」


 大川目沢君が立ち上がり、声を掛けてくる。


 「ああ、君の勝ちだ」

 

 「僕の負けだ」


 「敗者は去る事にするよ」


 「おいおい、つれないねぇ」


 僕は、つがるりんご保育園の敷地を出る。


 そして、とあるアパートを訪ねる。


 「心真地ちゃーん」


 インターホンを鳴らしながら、心真地ちゃんの名を呼ぶ。


 「おや、虎松君」

 「泣いてるよ」


 「泣いてるんだよ」

 「入れてもらうよ」


 「虎松君、乙女幼女にたいして入れるだの入れてもらうだの」

 「物騒だねぇ」


 「そんな事じゃ、保育園の幼女達にも」

 「いや、そこは上手くいくんだろうか」


 「何を言ってるのか分からないけど」

 「とりあえず、お邪魔します」


 わけのわからない事を言ってる心真地ちゃんとの話をおいて、強引に部屋に入る。


 「んー、強引だね」


 「まぁいいや」

 

 心真地ちゃんの家にも、ゲームがあった。

 

 心真地ちゃんも、ゲームをする。

 

 けど、心真地ちゃんはゲームが一番好きってわけでもない。

 毎日ずっと、ゲームをしてるわけでもない。

 心真地ちゃんは、アニメやアニメのフィギュアの方が好きな幼女だ。


 だから、僕は心真地ちゃんにゲームで勝った。

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