虎松幼少編2話 晋突


  大川目沢君のキャラクターは、晋三だ。


 超至近距離という程ではないが、接近戦キャラクターだ。


 考えてる時間はない。


 【Fight!】


 ゲーム機のアナウンス音声が、ゲーム開始を告げた。


 至近距離での殴り合いでは、勝てない。


 僕は間合いを多めに取りながら、AボタンとBボタンの同時押しで幻撃を撃っていく。


 晋三に飛び道具はない。 


 距離さえ取れていれば、こちらの一方的なシューティングゲームだ。


 僅かに、距離を詰められていくが、晋三のライフゲージはもう3割を切っている。


 こちらは、ノーダメージ。


 このままライフを撃ち落としきれるか。


 僅かづつ、距離を詰められている。


 大川目沢君は、しっかりと研究をしてきている。


 大川目沢君の操作一つ一つは、幻撃をくらっていても、それは計算されたものだったんだ。


 晋三のBボタン攻撃は、方向キー入力によっても異なるが、主力はニュートラル+Bによるリーチが長めの横蹴りだ。


 こちらのレバーを後方に入れてのガードは間に合わず、横蹴りの先端が幻の腹に当たる。


 幻は、腹が弱い。


 そのまま、やられモーションのまま、方向キーを進行方向斜め下+Bによるスライディングが続く。


 幻のHPゲージは、今の2発で半分ちょっとに減らされていた。


 が、この晋三の横蹴りからのスライディングが続いた時は、硬直時間も長くなる。


 接近戦を得意としない幻の攻撃でも、間に合う。 


 十字キーをニュートラル+Aボタンによるジャブ攻撃を打つ。


 幻のジャブ攻撃は、やはり、晋三のスライディング攻撃の硬直中に入る。


 晋三のHPゲージは残り2割。


 ここで、十字キーニュートラル+Bボタンによるローキックにつなげる。


 繋がるんだ。

 

 繋がるのは分かるんだ。


 が、繋がってもそれは、そこで止まってしまう。


 晋三のHPゲージは残り1割になったが、のけぞり状態になっていない。


 そのまま、晋三のAボタン+Bボタン同時押しの必殺技:晋突が発動する。


 晋突が、幻の心臓を突く。


 幻のHPゲージは、0になった。


 【1P:晋三 WIN!】


 ゲーム機のアナウンス音声が、大川目沢君君の勝利を告げる。


 僕の負けだ。

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