96話 宿屋


  荒野を歩いていると、宿屋が見えてきました。

 宿屋が、ぽつんと見えます。


 「ひぃぃ」

 「こんな荒野にぽつんと一軒宿やよ」


 「ぷる」

 「罠かもしれないの」


 危険察知担当2人が、難色を示す。

 

 「まぁ、でもMMORPGよ」

 「オフラインRPGだろうとVRMMORPGだろうと」

 「商人が誰もいないダンジョンでぽつんと商売したりしてるなんて」

 「お約束でしょう」


 「てめぇ」

 「それもそうだな」


 「でしょう」

 「良いこと言った私に、ご褒美ちょうだい、環希ちゃん」


 「このフィールド荒野じゃない」

 「フルダイブ型VRMMORPGだから、喉の渇きもあるし」

 「何か飲ませてちょうだい」


 「てめぇも私も、飲み物なんて何も持ってねぇよ」

 

 「いやいやいや」

 「人の体の5%は水分で出来てるのよ」

 「その5%の水分を飲ませてと言ってるのよ」

 「女の子にこんな事言わせるんじゃないわよ」

 

 「てめぇ、そんな事言うんじゃねぇよ」


 「小脇に抱えられたまま騒がれると、余計に熱いの」


 小羽玖:「本当ね、このままだと」

 「ゲーム内ステータスや行動に悪影響が出てくるんじゃないかな」


 「小羽玖、早く宿屋に入るの」


 「そうね」


 小羽玖がひぃひぃ怯えず、宿屋の扉を開ける。

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