64話 そんな装備で大丈夫かしら。この手斧も持っておきなさい。


  「ああ、俺は行く」

 「俺は、戦う」


 規生君に戦意が出てきたようです。

 

 「規生君はその弓が持っているメインウェポンなのかしら」


 規生君を配下に加えたのも、弓を持っていたからというのがある。

 弓がメインウェポンなら、接近してしまえば後はどうにでもなると思っての事よ。

 プレイ開始の所持金が1000Cで初心者用の武器が一つ300Cなら、近接武器にまで所持金を回しているとも思えないからね。


 「ああ、300Cで弓を選んだんだ」


 弓も、300C。

 初心者用の武器はやはり300Cで統一で間違いなさそうですね。


 「サブウェポンは持っていないのかしら」


 「持っていない」

 「靴や防具も買っていたら、サブウェポンまでカッパーが回らなかった」


 確かに、規生君は靴と腕の防具もつけています。


 「そんな装備で大丈夫かしら」

 「この手斧も持っておきなさい」

 

 さっき手にいれた手斧を、規生君に渡しました。


 「ああ」


 「私が、あそこの少女に近づくから」

 「援護を頼むわね」

 「できれば、確保して戦力にしたいわ」


 「ああ、義徒を殺すためには」

 「戦力が必要だ」


 「分かってるじゃないの」

 「私達は義徒を殺さなければいけないもの」

 

 規生君は中々物分かりが良いようで、義徒を殺す事も、戦力が必要な事もしっかり分かってくれています。

 うーん、これはいい拾い物をしましたね。


 少女に近づいていく。


 「こんにちは」


 少女に声をかける。

 あまり、可愛くないわね。

 それでも、少女は大歓迎です。


 「私は、上林月恵」


 私が本当に上林月恵かはまだ自覚できないけれども、さっき同様に上林月恵だという事にして、

はったりをきかせてみる。

 予想通り、少女は殺意と敗北感を両方同時に上げる。

 

 「上林ぃ」

 「てめぇぶち殺してやる」


 少女は、上林月恵を自称する私に怒りを向けているつもりだが、いかんせん、敗北感の方が強く出てきてしまっている。

 きっと、上林月恵とやらに何もかも奪われたのでしょう。

 何もできなかったのでしょう。

 そりゃあ、敗北感に何もできずに威勢をはるだけしかできない事なのは仕方がない事です。

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