第49話 愛おしい
「ふひっ」
「私、永遠の英雄になる」
青葉ちゃんは、ウィンドウ画面を操作し、ログアウトボタンを押す。
皆、彼女に注目していた。
【永遠の英雄になりたい少女はログアウトしました】
アナウンスが、黄葉ちゃんのログアウトを知らせる。
アナウンスといってもさっきのような運営の人間のようなアナウンスとは違う。
ただの、機械的なアナウンスのように聴こえる。
このアナウンスが知らせた青葉ちゃんのログアウトが嘘だという事はないでしょう。
ただ、ログアウトして無事なのかどうかは、分からない。
この機械的なアナウンスは、そんな事は告げていない。
黄葉ちゃんのアバターはとうにこの場にない。
「うぉぉぉ」
「お前は英雄だよ黄葉ぃ」
「英雄黄葉が勇敢に単騎で先陣を切ったぞ」
群衆は、青葉ちゃんの勇敢な突撃を称える。
「やれやれ」
「汚らわしいな」
「人間というのは」
義徒が、戻ってきたようだ。
私に声を掛けたのは、私がメルメちゃんと一緒にいたから。
他の群衆より少し長く、私と話したからか。
他の異世界での私と関わりがあったからか。
私が、特別な存在ではない。
私も、この場にいる、義徒のいう汚らわしい人間と同なんだ。
「そうね」
「私達は、高潔じゃない」
「薄汚く、姑息で、弱い」
「愛おしいじゃないか」
驚く言葉ではなかった。
実に、水守の一族らしい。
いや、端守らしいというべきかしら。
水守なら、この程度では、愛おしいとも思わないかもしれません。
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