第46話 誰か試しにログアウトして欲しい。え?私?嫌ですよ。ログアウトして死んだらどうするんですか


  「私はもうログアウトするわよ」


 「子供達は早くログアウトした方がいい」

 「あのメスガキの後を追うことはない」


 「死のスリルがあるゲームをしたい人以外はログアウトした方がいいんじゃなーい」


 ログアウトするという者、ログアウトを勧める声が多く現れる。

 当然でしょうね。


 けれど、まだログアウトする者は現れない。

 当然よね。

 私達は、ゲーム、アニメ、漫画、ラノベ、映画、ドラマ。

 ありとあらゆる創作物で、この手のフルダイブ型VRMMORPGから抜け出せなくなった類の物を見ている。

 その創作物の多くで、ログアウトできない。

 ログアウトすれば、現実世界の肉体が死に至る。

 そういった当然のお約束を見てきているのだから。

 誰もが、ログアウトする事を恐れていた。

 そして、ログアウトすると宣言し。

 人には危険だから早くログアウトした方がいいと勧めていた。

 誰もが、誰か試しにログアウトして欲しいと願っていた。


 【端守義徒とGAMEをするなんて事が】

 【無謀であり、彼の参加もイレギュラーな事なので】

 【まさか、端守家当主が参加してくる等、こちらも予想できませんよ】

 【現実世界の肉体が弱っている状態で水守一族の者や英雄とGAMEをすれば】

 【そりゃあ痛みでショック死する事もあるかもしれませんが】

 【通常のプレイなら、早々死ぬ事なんてないんですよ】

 【痛みだって、現実世界に比べたら制限されてますし】

 

 言い訳のようなアナウンスが流れている。


 けれども、私もこの場の群衆も、言い訳すんなとは言わなかった。

 群衆が望んでいる聴きたい事は、謝罪や理由説明ではなかった。

 良いGAMEを見せてくれたとはいえ、会ったばかりのメルメちゃん。

 彼等にとっては名前も知らないメスガキが死んだ事よりも、

 無事ログアウトできるのか。

 その事が重要だった。

 私も、義徒に怒りを口にする事はできるはずなのに、していない。

 分かる。

 義徒に怒りを口にすれば、私はHPを0にされ、私は死ぬかもしれない。

 そんな私が、この群衆の行動をどうして批難できるのかしら。

 薄情なのは、クズなのは私の方じゃないですか。

 私にとっては、メルメちゃんであり、このオンラインゲームで一1番初めに出会って、行動を共にしてきたメルメちゃんなのに。

 私好みのロリロリロイヤルフェイスつるつるぺったん美少女だと、私が結婚する嫁だと思っていたのに。

 それなのに、私はメルメちゃんを見捨てているのです。

 義徒が死ぬかもしれないゲームだと分からずに人間1人を殺しても謝罪しないように。

 私も、謝罪しません。

 必死に言い訳を見つけると、私もメルメちゃんに酷い事をいわれたのです。

 私は、言い訳を見つけてでも、私はまだ生きていたいのです。

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