36話 目押しキャンセル
「見たか」
「あのメスガキは必殺技キャンセルなんて軟弱なんてもん使ってんじゃねぇ」
「目押しだ」
「目押しキャンセルでサンダーラッシュに繋げてんだよ」
「言われてみれば」
「必殺技キャンセルでサンダーラッシュに繋げてるわけじゃないようには見えづらいわね」
「目押しが衰退していく中、中々に骨のあるメスガキじゃねぇか」
「私も気に入っちゃったわ」
「そのまま殴りころしちゃえメスガキー」
群衆は、メルメちゃんのクラシカルな技量に、魅せられていた。
「義徒は負けないわ」
「義徒は一発がでかいんだ」
「あんな小さなメスガキなんて一撃だぜ」
群衆の中で言うように、体格というのは重要な要素なのよね。
今の所、メルメちゃんのHPは1ドットも減っていない、HPゲージでしか表示されていない。
数値としては見れない。
メルメちゃんのHPも防御力も、私には推測するしかない。
けれど、メルメちゃんの体格からいって、まぁ撃たれ弱いでしょうね。
その撃たれ弱さというデメリットから、サンダーラッシュから通常攻撃に戻りループが出来るんでしょう。
それに、目押しと言っても、近年のゲームでは目押しキャンセルが存在しないものも多い。
目押しキャンセルは、年々減っていっている。
その目押しキャンセルを使えているのは、決して技術だけではないと、私は推測しているわ。
通常、必殺技キャンセルを使えば、コンボキャンセルによるダメージ減少値が大きい。
それが、目押しキャンセルでは、コンボは途切れてはいないし、キャンセル扱いとはいえ、必殺技キャンセルに比べれば、
コンボキャンセルによるダメージ減少値が低い。
目押しキャンセルができる恩恵は大きい。
当然、代償も大きい。
義徒は体格からいっても、打たれ強いのは十分に分かるでしょう。
実際、メルメちゃんのサンダーラッシュからの通常攻撃への戻りループをくらっても、HPはまだある。
瀕死ゲージにも到達していない。
打たれ弱い華奢で小さいキャラなら、もう瀕死ゲージに到達してもおかしくない攻撃をくらってるのよ。
「けど、メスガキのMPゲージはまだあるぞ」
「これ、メスガキのMPゲージが尽きる前に、はめ殺しじゃないか」
「いいえ、これははめなんかじゃないわ」
「シビアな目押しキャンセル使ってるんだもの」
「2週目のサンダーラッシュに繋がるかも、わからないわ」
「いったれメスガキィ」
「返せ義徒」
群衆も、こんなものを見せられたら、怒りなんて吹き飛んでしまう。
私も、群衆もすっかり魅了されていた。
そうだ、これが私なんだ。
きっと、この場にモンスターがいても、畜生がいても、誰もが魅了されていた。
だって、私達はこういう風に出来ているのだから。
私も、この場の群衆の誰もが、なんでフルダイブ型VRMMORPGでコントローラー握って格ゲーやってるんだなんて。
そんな事、もう誰も気にしていなかったわ。
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