31話 VRMMOの世界に転生したと思っていたのだけれど、これ異世界転生しちゃってません?


  「リアルワールドでは2000円だ」


 うーん、高い。

 なんか、あの少量なのにやたらと高いやつよね。

 なんでか、そんな事は記憶に残ってるのよね。

 

 「義徒が成敗フェイスシートの売り上げの1%は」

 「恵まれない子供達のために使われる事になっている」


 「知ってるさー」

 

 「HAHAHA、言うまでもなかったか」


 「現実世界でも使ってるぜ、義徒の成敗フェイスシート」


 「ありがとう」

 「明日にもありがとう」


 義徒が腕毛たっぷりの腕を広げるポーズを取って、意味の理解できない明日にもありがとうを言う。

 腋毛凄い事になってるわよ。

 あれ、誰が喜ぶのかしら。


 「出たー」

 「明日にもありがとうだー」

 「未だ誰も意味を理解していない、明日にもありがとうよー」

 「キャー、腋毛が見えてるー」

 「SEXY腋毛ー」


 こいつら、狂っていやがるわ。


 本当に、狂ってるわ。

 義徒の成敗フェイスシートなんて、まったく売れなかったはずよ。


 義徒も、誰からも好かれてなかったわ。

 天水島の結界の向こう側から、正義だの成敗だと言って、動画配信したりグッズ出してただけのカスよ。

 なんで、こんなに人気があるのよ。


 「義徒、サイン書いて」


 幼い少年が、義徒にサインをねだる。


 「ああ、いいだろう」


 義徒が少年の服にサインをしてから、腋毛を一本抜いた。

 なんで?


 義徒が、サインに抜いた腋毛を付け足す。


 あの、テープとか何もしてませんよね。

 どうやって、その腋毛くっつけたんですか。


 「義徒、これじゃ義徒の腋毛が取れちゃうよ」


 取れた方がいいんですけどね。

 私だったら、その服捨てます。


 「大丈夫だ、私の腋毛は特別性だ」

 「引っ付いて10年取れない」

 「もし10年以内に取れたというなら、連絡してくれ」

 「ありえないがね」


 「ありがとう義徒。大事にするよこのサイン腋毛付き服」

  

 私は、もう怖くなっていたわ。

 ここは、どこなのかしら。

 VRMMOの世界に転生したと思っていたのだけれど、これ異世界転生しちゃってません?

 私、前世でここまでとち狂った世界にいた気がしないんですけど。


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