ひより編1話 「俺、何かやっちゃいました?」


  「ひよりちゃん」

 「俺とエターナルファンタジーインフィニティレベルアップ一緒に遊ぼうぜ」


 廊下でエターナルファンタジーインフィニティレベルアップのレベル上げをしてると、砺波佳成君が声を掛けてくる。


 「俺もエターナルファンタジーインフィニティレベルアップ遊んでるし」


 「しっしっ、しーっ」


 「知ってるしー-!」


 「そうだよな」


 圭成君がエタレベを遊んでるなんて事は当然知ってる。

 そりゃあ、一緒に遊んでたし。


 圭成君は友達だし、嫌いじゃない。


 圭成君の言葉が遅れる。

 だって、圭成君がそうだよなと言って、私がまだそこに返していないんだから。


 「悪いな」


 圭成君が口を開いた。

 いや、圭成君は何も悪くないけれど。


 「なんか、俺また何かやっちゃったみたいで」


 圭成君は、よく事を言う。

 圭成君は何もやってない。

 私が、まだ返事が出来てないだけだ。



 「俺さ、前から気にはしていたんだけどさ」


  圭成君は、何か気にしている事があるらしい。

 いいよ、気にしている事があるならいいたまえ。

 何をそんなに気にしてる事があるのかしらないし、私が気のきいた返事を出来るとも思えないけれどね。


 「嫌がられてるのに強引に遊びに誘うのはよくないんだって」

 「ちょくちょく思う事もあったけどさ」

 「やっぱそういうのよくないなぁって」


 誰も、嫌がってないんだけど。


 「悪いな」


 また、圭成の悪いなだ。


 「もう、そういうの控えるわ」


 「ひよりちゃんとエタレベ遊んだのは楽しかった」


 私もだよ。


 「じゃあ、俺いくわ」


 ぅあ。

 声が出なかった。

 声が出るより、圭成君がこの場を去ろうとする方が早かった。


 「お待ちなさいな」


 女の子が、去りかけた圭成君の腕を掴む。

 なんで?


 「ん?えっと、上林さん」

 「どうしたの」


 圭成君が戸惑っている。

 そりゃあそうだ。

 私も戸惑っているもん。


 「嫌がる女の子に強引なナンパね」

 「引き際ってのが分からないのかしら」


 えぇっと、彼女は上林月恵さん。

 女の子が大好きなレズだ。 

 圭成君を悪役に見立てて、私を絡まれて迷惑している少女という事にして。

 それを助けて、女の子、私に近づこうとかしてるのかな。

 どうしようもないやつね、こいつ。


 「俺、今引こうとしてたんだけど」


 「言い訳無用」


 「えー」


 圭成君が困ってる。

 流石に、圭成君もこの理不尽な絡まれ方をして、悪いなという言葉は出さないようだ。


 「俺、何かやっちゃいました?」


 何もやってないよ。

 圭成君は何も悪くないよ。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る