第15話 ステータスオープン


  カフェに入り、電子パッドを見てみる。

 ファンタジー風のMMORPGなのに、電子パッドなんて、雰囲気壊すじゃないの。

 記憶をなくす前の私がいた所も、なんとなく、いろんな店舗で電子パッドでの注文が増えていってた気もするが。

 この異世界転生したのか現実のゲームの中なのかよく分からないような世界でも、こんな事になっているとはね。

 <ストロベリーパフェ 100C>

 <アメリカンコーヒー 50C>


 初めの所持金1000Cで全然足りるわね。

 この1000Cで装備を整えるなんかより、ログアウトできるものなら、とっととログアウトしたいのよ。

 私は、命がけのデスゲームするようなゲーム狂いじゃないわ。


 電子パッドで、ストロベリーパフェとアメリカンコーヒーを注文する。


 「すとろべりー」


 「ストロベリーが好きなのね」


 「うん」


 「メルメはねぇ」

 「ストロベリーが好きなのかパフェが好きなのか」

 「どっちだろー」


 ロリ美少女は、ご機嫌に返事する。


 えっと、まず彼女の名前はっと。


 どうも、他のプレイヤーの名前は見れないようだ。


 しかし、なんだか、私の子宮が、彼女の名前はメルメちゃんのような気がする。

 今ついさっき、私の子宮だけでなく、聴覚がメルメと聴いたような気もする。

 いえ、言ってたわね。

 メルメちゃんよね彼女は。


 「お嬢ちゃんお名前は」

 「私は」


 私は誰だっけ。

 余計な事は覚えてるのに、自分の名前も覚えていないのね。

 

 「私はー?」

 「まぁいいや」

 「メルメはメルメだよ」


 ああ、やっぱりメルメちゃんね。

 さっき、自分で言ってたからね。


 「ステータスオープン」


 異世界にきたら、2番目にしなければいけない事は、ステータスオープンよね。


 ステータス画面を見てみる。

 が、名前のようなものが見当たらない。


 「お姉ちゃん、ステータス画面見ないと、ゲームでのお名前覚えてないの」


 「うん。お姉ちゃん、名前が思い出せないの」

 「このゲームでの名前も、現実だか前世だかの方も」


 「あー」

 「お姉ちゃん」

 「このゲームの中に転生しちゃったんじゃない」


 え。本当に、そうなのかしら。

 しかし、そんな事を、会ったばかりのメルメちゃんがなんでわかるのかしら。


 「そんなに珍しい事じゃないよー」

 「前世で、馬鹿な下らない死に方した人達は」

 「異世界転生できずに」

 「ゲームの世界に転生しちゃう事があるんだってさ」


 はぁぁ。

 私は、私の子宮で信じたメルメちゃんを信じるわ。

 それに、私、どんな死に方したか覚えてはいないけれども。

 すごく、馬鹿な死に方をしたような気がするのよね。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る