5.「あんっ!♡ししょぉ……だめぇ……!♡」

忍の修行を始めてから幾許かの月日が流れた。

はじめは上手く投げれなかった手裏剣もある程度はまともに飛ばせるようになり、たどたどしかった身のこなしも随分と様になってきた。

少年は順調に成長している。



「はっ!!」



そんなある日、少年は妖術の修業をしていた。

これは幻魔から教わったもので、忍の基本となる技である。

少年はまず両手を合わせ気合を入れると、「ふぅー」っと息を吹き出した。

すると、合わせた掌の間に小さな炎が生まれた。

次に少年は印を結ぶと、今度はその炎に向かって呪文を唱えた。



「火遁の術!」



次の瞬間、少年の口から火炎放射器の如く勢いで炎が噴き出す。そして炎はやがて龍のような形となり宙を舞い始めた。

これが忍が使う代表的な攻撃忍法の一つ、火遁の術だ。



「ほう、上達したのう。前よりも威力が増しているではないか」



その様子を見ていた幻魔は嬉しそうな顔をして言った。少年の成長ぶりを見て喜んでいるようだ。

幻魔の言う通り、少年の実力は確実に向上していた。そして何より…



「その二本に増えた尻尾のお陰かのぅ」



そう、少年の尾は一本ではなく、今や二本に増えていた。いつの間にか尻尾が増えていたのだ。

尻尾が一本しかないと妖狐ではなくただのキツネ…だが、これで少年も一目で妖狐と分かるようになった。

嬉しかった。着実に自分が進化していくのを感じることが出来たからだ。




「いえ、これも師匠のご指導のおかげです」



だが慢心したりはしない。驕る者は久しからずと言うように、少年は常に謙虚でいようと努めているのだ。

少年は照れ臭そうに頭を掻いた。



「うむ、お前はよく頑張っておる。このまま精進すればいずれは立派な忍になれるじゃろう」



幻魔に褒められ、少年は更にやる気が出た。

もっと頑張ろうと意気込む少年であったが、ふとある事が頭をよぎりシュンとしてしまう。



「どうした?」



そんな少年の様子を見て、幻魔は不思議そうに尋ねた。



「師匠…僕…」



少年は俯いて言った。



「僕の身体、いつまでたっても小さいままで成長しないんです……。これってなんで……?」



少年は不安げな表情をして幻魔を見上げた。

確かに彼の外見は幼い子供のままであった。少年が成長する兆しは今のところ全く見られない。

少年も自分の身体について色々と考えていたのだが、いくら考えてみてもこれといった答えは見つからなかったのだ。



「何を言うとるんじゃ。お前は生まれてまだ100年も経っておらんじゃろうが。小さくて当たり前じゃろ」


「え?そうなんですか?」


「半化生に寿命は長いからのぅ。100歳以下なんてひよっこじゃよ、ひよっこ」



幻魔の言葉を聞き少年は驚いた。

半化生と人間の寿命は違う。何百年もの悠久を生きる半化生にとって百歳以下というのは赤子も当然。

前世では人間として生きていた少年はその事を知らなかった。

これから自分は何百年も生きるのかと思うと嬉しいやら悲しいやら複雑な気持ちになった。

果たして自分にそんな長い時を生き抜く事が出来るだろうか?この身は既に人間ではない。だが、記憶は…心は確かに人間なのだ。少年は自分の行く末を案じていた。



「まあ、お前さんなら大丈夫じゃ。心配せずともすぐに大きくなるわい」



少年の心中を知ってか知らずか、幻魔は安心させるように少年の肩に手を置いた。



「それにのう、外見は幼くてもここはちゃんと大人じゃないか…♡♡」



幻魔はそう言いながら、少年を撫で回す。



「あっ♡♡」



少年は思わず声を上げてしまった。



「くっくっく、相変わらず敏感じゃのう。どれ、また大きくなったかどうか確かめてやるぞ……んっ♡♡」



「師匠…♡♡すきぃ…♡♡」



少年は幻魔の耳元で囁いた。



「うむ……儂も好き……♡♡」



二人はしばらく抱き合った後、唇を重ねた。


最近は…というか修行が始まってからはいつもこうだ。最初は真面目に忍の修行をしているのだがいつの間にか房中術(多分嘘だろう)の修行になってしまう。

でも少年は満足していた。忍としての実力が上がってきているのは確かだし、何より少年は気持ちいい事が大好きだからだ。

それに先程聞いた話によれば自分の寿命は何百年もあるらしいではないか。ならば焦る事はない。ゆっくりやればいいのだ。

少年は幻魔を強く抱きしめると再び行為に没頭していった……


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