第9話 稼げそうです
「ふぁー」
あくびしながら起きてきた。
あのあと、風音のやつに数時間付き合った。
予想していた通りけっこうなオタクでいろいろと駄目だしされてしまったけど完成した動画片手に喜んでた。
だいたい四時間くらいは寝たからまぁ、今日一日くらいはなんとか乗り切れると思う。
朝も食べて俺と涼音はいつも通り車で送ってもらうことになったんだけど。
「待って、父さん」
風音の声。
庭の方を見ると風音がいた。
涼音も涼音パパも驚愕していた。
「どうしたんです?」
「制服なんて来てるがどうしたのだ?風音」
風音はぽつりとつぶやいた。
「学園、行く」
「え?それはほんとうなのか?」
涼音パパの声。
「うん、行かせないとぐれるから」
車に乗り込んできた。
俺のとなりだ。
ちなみに俺たちは後部座席に座ってる。
本来ふたりようなのに三人で乗ってるからめちゃくちゃ狭い。
でも
(美少女にサンドイッチされてる。これも悪くないなぁ)
「まさか、風音が部屋から出てくれるなんて。どういう風の吹き回しだ?」
涼音パパの質問に風音が答えた。
「姉さんだけじゃ不安だから私も優馬のボディガードする」
「なにがあったのかは知らないけど。ありがとう優馬君。風音が部屋から出てきてくれてうれしいよ」
パパはとてもうれしそうだった。
◇
学園の放課後、俺は作動茶道部へと足を運んでたんだけど
そこには風音もいた。
眠そうな顔だ。
昨日のあれで寝不足なんだと思う。
今はこんなんだけど、昨日はめっちゃテンション上がってたし。
「ここの部員なの?」
「一応ね。幽霊だけど」
中に入ってく風音。
中にはまだ人がいなかった。
「あいかわらず地味な部屋」
「こんなもんじゃない?」
「だめだよ、地味だもん。お茶飲むだけのつまんない活動内容とかも変えるべき。だから部長ひとりしかこないんだし」
「たとえば?」
「ここをカフェにするとか。優馬がお茶入れてくれるカフェ」
それ、もう部活じゃなくない?店だよ?
風音は押し入れからちゃぶ台をとりだしてきた。
それを部屋の中に並べると。座った。
「お茶入れてくれる?」
「まぁ、いいよ」
お茶を入れて風音の前に置いた。
「なんか、言葉とかないの?『お待たせしました、お嬢様』とか。昨日演技は教えたよね?」
「お待たせしました。お嬢様」
「うん、いいと思う。ズズズ」
お茶を飲んでた。
「うん、やっぱ男の子がいれてくれるお茶はおいしい」
それから、風音は持ってきた紙袋に手を突っ込んでた。
なにを出してくるのはなんとなく察せた。
「これ着てみて」
渡してきたのは執事服だった。
とりあえず来て見る。
それから風音はA4の紙に文字を書き始めた。
執事カフェ。
メニュー
お茶 600円
コーラ 800円
ほんとに商売でも始めるつもりなんだろうか?
それから風音は書いたメニュー表を部室の扉に貼ってた。
「これで客も来るよ」
「ほんとに?」
まぁ来るとしてもさすがに明日以降だろう。
期待して待ってよ……
がらっ。
「風音殿、こんなところに呼び出してどうしたでござ……」
独特な語尾の女の子が早速入ってきてた。
ポニーテールで竹刀を持った女の子。
俺と目が合うと……慌てていた。
「は、はわわわわ、これはどういうことでござるか?し、執事?!」
「お茶600円で入れてくれるよ」
「ゴクリ……600円……」
そうだよな。
高いよな。
うん、君の気持ちは分かるよ。
「払うでござる」
「え?」
女の子はめっちゃ急いで部室の中へ。
そして、ちゃぶ台の前に座った。
「はぅぅ、こんなイケメン執事にお茶入れてもらって600円でござるか?」
「うん、600円ぽっきり。サービス中」
「実質無料でござるな」
そんな会話をしていた。
それから女の子は財布から600円取り出した。
俺に渡してくる。
「お茶が欲しいでござるよ」
「え?あ、うん」
めっちゃすんなり払うねこの子。
逆に戸惑ってしまう。
まぁ、なにはともあれとりあえずお茶を出そう。
お金もらっちゃったし。
「どうぞ、お客様」
目の前に出してみる。
「お客様じゃないでござる。拙者には楓という名前があるでござる。名前を呼んでほしいでござるよ」
「どうぞ、楓お嬢様」
俺が名前を呼んだ瞬間。
「あううううううううううううううううううううううううううううう!!!!!!!!!」
やばい。
めっちゃ興奮してる。
俺には執事の良さが分からないけど。
「お待たせしましたー」
静香の声。
扉を開けて部室に入ってきたらしい。
そして、この部屋の中を見てきょとんとしてた。
「え?なんです?これは」
「私から説明しよう、部長」
風音の声。
「執事カフェを開こうと思う」
部長なら止めてくれそうだよな。
このよくわからない状況。
と思ってたんだけど
「いいですね、それ」
え?いいの?
「お茶には飽きてきましたし、たまにはラテとかもいいですね。いいじゃないですか。カフェ」
「流石部長。分かってくれると思ってた。そこで相談があるんだけど、このカフェの顔である優馬のグッズやサービスも販売したいと思うんだ」
「どのようなものなのでしょう?」
「優馬との写真撮影とか。写真集とか、どうかな?すっごい売れると思うんだけど」
「いいですね。カフェとなると人もいっぱい来て賑やかになりそうですね。さびれてた部室ですしいい提案だと思いますよ」
(いい提案なんだ、これ)
勝手に話し進めてるけど。
「取り分とかはどうなるのさ」
「もちろん優馬に全額」
「え?全額いいの?」
「ん、あたりまえ。働いてるのは優馬なんだし」
ということで、この部室はこれから執事カフェになるようだ。
さよなら、茶道部。
そういえばだけど、この世界に来てからずっとお金稼ぎたいなぁとか思ってたけど。
こういう形で稼げることになりそうだ。
最低限、スマホ代とか稼げるといいよな。
できればもっとっもっと稼ぎたい気持ちもあるけど。
稼げるようになったら風音たちにも給料的なあれで少し分けるのもいいよな。
これからのことを考えると少しワクワクしてきた。
うーん。執事カフェ、どれくらい儲かるんだろう?
できれば目指せ億万長者!って感じ。
いくら逆転世界と言っても。
いつ何があるか分からない(とつぜん貞操逆転が解除されたり)し、需要があるうちに生涯で必要な分のお金稼いでしまいたいね。
別に減るもんでもないし。
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