第7話

七話



あれから数日

私達には日常が戻っていた

強いて言えば客足が多くなり

毎日忙しくしている


それもその筈

ここ近辺にある魔法店はここのみ

それにここの商品はとある事情で周囲の店よりも品質は良く、値段も安い

下請けで工事をする彼らにとってここはオアシスの様な物である


「ふぅ……」

客足も一段落し

私達は昼休憩を取っていた

「ねぇセレナ」

後ろで商品棚を漁っているユキが私を呼ぶ

「んぅ?」

「ここに飾ってるロケランどーするの?」

ユキは私がカウンターの奥に飾ってあった骨董品のロケランを持ち出し私に聞く


「ん〜もう倉庫に仕舞っておこうかな、」

「おけ」

そうやって商品の移動や休憩明けの準備をしていると店の裏のベルが鳴る

「私が出るよ、ユキは商品の移動をよろしく」

「は〜い」


私はユキに報告だけして店の奥へと行き玄関を開ける

すると


「メアリー?」

そうメアリーが大きなバックを背負って立っていたのだ


「こんにちはセレナさん、数日ぶりですね、本日はこちらへの就職の相談に参りました」

「うぇ!?」

メアリーの発言に私は口が空いたまま塞がらない

しかし先日の蛮神の件でマキが人材を紹介したいと言っていたのを思い出す

「まぁ、兎にも角にも入りなよ、たちばなしもあれだし」

「ありがとうござきます」

私はメアリーを中へ招きユキカウンターに居るユキに飲み物の準備を頼んで奥の部屋に案内する


「結構大きなお店なのですね」

「まぁ建てるのに使われた金額は相当な物らしいからね」

「そうなんですね……」


私達が奥の部屋へと到着するとテーブルを挟み向かい合うように座る


「それじゃあまぁ……面接でも始めようか」

「よろしくお願いします!」

そう言うとメアリーはマキのマークが記された履歴書を物を出す


内容を見るとマキによる人材の紹介の為の書類とメアリーについての情報が書かれている


「ふむふむ……」

履歴書に書かれたメアリーの詳細について

メアリーの得意分野は事務処理等の作業であり

その腕は大企業に長年務める社員の人間を超えていると書かれて居る

しかし戦闘についてはそこまで強くなく

多く見積もっても中の下程度の様だ

マキの所は戦闘が多い

メアリーは足手まといなのだろう

しかし戦闘以外の技能は他の追随を許さず

人手不足で尚且つそう言う技能の不足している私達にとっては願ってもない話だった。


「採用で」

「本当ですか!」

私は履歴書をメアリーに返し合格を伝えるとメアリーは目を輝かせて喜ぶ


「まぁね、私達も最近人手不足だし、それにマキが自信を持って進めるなら受けない理由はない」

「私頑張ります!」

「宜しくね」

そうやってメアリーと話をしているとユキが扉を開け飲み物をテーブルの上に置く


「今日は紅茶かな?」

「余っていたからね」

ユキの出した紅茶を三人でゆっくり飲みながらユキにメアリーを採用した事を伝える


「ちょうど人手不足だったしありがたいね」

「まぁ求人情報を見たんだが紹介したい奴がいるってマキが言ってたからね」

「あっそう言えば」

メアリーは思い出したようにカバンを漁り出し黄金に輝くメダルを取り出す

「これは?」

「セレナさん達が倒した蕃神を封じ込めているアーティファクトです、」

アーティファクト

それは特異的な魔法や異常現象を器に封じ込め力を利用する為にとある企業によって製造技術が確立した魔導具である

「どうしてこれが私達に?」

「マキさんが報酬に銜えると」

「金は貰ったし別に良いのに……」

私はメダルを受け取り見つめる

そんな感じで紅茶を嗜みながら休憩していると突如店玄関の呼び出し鈴がなる


「はいはーい、」

私は返事をし二人に断りを入れ玄関へと向かう

そうして玄関の扉を開けると目の前には黒いスーツを着込んだサングラスの中年男性が立っており

周りにも同じ様な服装をした男性が私を見つめていた。


「ま、まだ店は閉まってるんですけど……」

私がそうして彼らを返そうとした瞬間私の目の前に居た男性が口を開ける


「嬢ちゃんがここの店主やな?自分らはアヴァンギャルドインダストリーズ社から来たんやが孃ちゃんらも知ってると思うがインフラ改革を始めとるんよ、そんでなこの店もアヴァンギャルドインダストリーズ社の勢力圏に組み込みたいと思っとるんや、どうや?」

「す、少し待ってください」

男の急な要求に私は頭を抱え考える

いきなり来たかと思えば勢力圏に入れだなんて

しかしこれ程大規模な工事なのであればそれ程の利権が発生する

他の企業による横取りを防ぐ為には仕方ないのだろう、

しかしそんな事私達が知る筈もないのだ。


「契約書とか諸々は置いていくから検討してくれや?決まったら本社のある自治区に来て手続きしてくれや、まぁまた数日後来るさかいそれまでに決めてや」


男はそう言うと後ろの連中も連れて去って行ってしまった

私は契約書を確認する為二人のいる店の奥へと戻る



「どうだったの?セレナ」

ユキが戻って来た私を心配そうに見ながら言う

「アヴァンギャルドインダストリーズ社の人達が来てさ、勢力圏に入れだって」

私はため息を付きながら書類をテーブルに置き三人で書類を確認する

良くも悪くも肩書のみでメリットデメリット共に少ないのだ、

企業もこう言う細々とした物に介入する気は無いのだろう

強いて言えるメリットは勢力圏に入る事で貰える給付金位しか無い

と言っても拒否権など無いのだが



「入るしか無いかなぁ」

私はため息を付きそう言うと二人もう〜んと唸りながら口を閉じる

ここでこの契約を蹴れば確実に嫌がらせやら何やらが発生する

それなら契約した方が良い

肩書があればその他の事も動きやすくなる事もあるだろう


「それじゃあ明日アーティファクト登録のついでに提出してこようか」

アーティファクトはその性質上危険である

神魔殿はそんなアーティファクトを管理する為アーティファクト保全財団を構築し民営化させた

そしてアーティファクトは財団の許可なしに所持出来ず

所持するには登録が必要なのだ

「そうだね〜どうせアーティファクトの登録しなきゃだしその時提出しようか」

ユキが私に同意し空になったコップを回収しキッチンへ向かう


「それなら私が店番を致しますね!」

メアリーが目を輝かせて言う

「そうだね、私とユキ明日店開けるから早速宜しくね」

「はい!今日の内に業務内容を覚えます!」

「良し!その意気だ、今から業務を教えてあげるから付いてこい」

「はい!」

私は店の看板を営業中に変更しメアリーに一通りの仕事を教えるのだった


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