ヒロインみーんな彼氏持ち!?なラブコメ~~~俺が命を助けたセクシーなギャルも、俺とかつて結婚を誓った美少女幼馴染も、俺を手紙で体育館裏に呼び出したツインテール女子も、もれなく全員彼氏がいる……

薬味たひち

プロローグ〜都合の良い男じゃだめですか?

 蛙化現象――想い人が自分に好意を向けた途端、その相手をまるで醜い蛙のように嫌悪してしまう、理不尽極まりない現象である。なんでも『カエルの王様』というグリム童話にちなんで名付けられたらしい。


 だけど、童話は蛙が王子になるからハッピーエンドな訳で。王子が蛙になるんじゃまったく救いがない。「私を好きになる程度の人間なんて願い下げよ!」……なんて理由で振られたら、俺は一生のトラウマになる自信があるね。


 でも一方で。

 、という矛盾した感情は、わからないこともないんだよね。だって才色兼備完全無欠のスーパーヒロインは、手が届かないからこそ憧れなわけじゃん? 俺みたいな凡人を好きになっては、その肩書に傷がついてしまう。学校№1美少女と卑屈な陰キャが結ばれるENDはラノベだからこそ認められるのであり、現実はそんなことを許してはくれないのだ。


 で、あるならば。俺は思う。



 、と。



 不誠実だ! 純愛こそ至高! NTR反対! ……そんな意見もよくわかる。けど倫理観とか抜きにして、一度よーーーく考えてみて欲しい。


 もしも才色兼備完全無欠のスーパーヒロインが存在するならば、彼女はパーフェクトなイケメンと結ばれて然るべきだ。決して俺のような陰キャが彼女の価値を損なうべきではない。


 それでもなお、完璧な彼女のお近づきになりたいと願うなら……2番目の男、都合のいい男になるしかない。

 そうすれば、スーパーヒロインの価値は本命のイケメンによって保障され、陰キャの俺は彼女に迷惑をかけずに済むわけだ。


 ま、俺は修羅場なんてまっぴらごめんだし、そんな虚しい恋愛は絶対にしないけどね。俺は初めて付き合った普通の女と、普通の恋愛をして、普通の幸せを一生かけて築き上げると心に決めているのだ。


 だけど、陰キャにとって恋愛は理不尽で残酷なのもまた事実。勇気を出した告白も『友だちとしか見れない』などという、よくわからない理由で却下され、そのまま疎遠になる。かといって、蛙化どころか初めから蛙以下の俺に告白する女性などいるはずがない。結局恋愛は顔面ゲー、才能ゲー、コミュ力ゲーで、弱者に戦えるような世界ではないのだ。


 そんな世界で、もしも美少女の2番目になることを迫られたら……ひょっとすると俺は、間違いを犯してしまうのかもしれない。


 ――まさかそんなひどい選択が現実に降りかかろうとは、さすがの俺も想像していなかったのだけど――

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