左利きに勝てると思うな!

 女の子を釣り餌にして沼に沈めて釣りするのも飽きた故、釣り場を離れるミハエル達。

 次のVRマップを適当に選んだら、体育館に飛んだ。

「おうおう! この体育館の雰囲気何年ぶりだ! 20年弱ぶりくらいかな」

 ミハエルがそう大きな声で呟く。体育館にその声が響く。

 ちなみに彼は15歳の時に大学を出ている。

 そして人がいる。

「たぶんNPCだなあれ」

 ドッジボールの球が体育館にたくさん転がっている。NPCが持っているボールもドッジボールだ。

「だろうね。このマップにあらかじめ設置してあるんだろう。プレイヤーキャラじゃないんじゃないかな」

 フレッドとアリウスがそう判断する。

 と――――

 ビュッ――――――――――!

「やっ!」

(こわい……)

 グラサンかけたおっちゃんが投げた、不意にものすごい速度(女子からすると、どころか男子でも怯える速度)で迫ってくるボールに体をこわばらせ体を縮こませる東雲波澄しののめはすみ

「危ないなぁ! いきなり投げるかな! しかも波澄はすみ狙いて、わたしを狙え!」

 それを受けて手の中に収めるミハエル。

「ミハエルさん…………」

 今の言動で、ちょっとミハエルに惚れ直した東雲波澄しののめはすみだった。

「おいおいおいおいっ!」

 ミハエルが少し慌てた様子で声を上げる。声を出しながら、他のドッジボールを拾う。

 ドッジボールを構えた人が9人いっせいにドッジボールを投げてきた。全員腕は軍人としての訓練を受けたミハエルよりもふとい。つまり球がアホみたいに早いのが9つ一気にミハエルを襲う。両手に持っていたボールは、1つこぼれてしまった。

「ちょっまっ! ちょっまっ! ちょっまっ! ちょっまっ! これルール――――ちょっいい加減にしろ!!」

 8球はジャンプしたりして避けた。あと1球どうしようもないので、こちらも手に持った1球を投げた。

 その1球と相手が投げた1球がまともにぶつかり、あらぬ方向へ飛んで行く。が東雲波澄しののめはすみの方向からは外れている。

「ナイスーミハさん~」

 フレッドが褒める。

「とっさの判断能力ととっさだからこそ出るコントロールや動きすごいねミハエルくん」

 アリウスもとっさの時こそ強いミハエルの性質に感心する。

「まだするんかい。アリウス、フレッド何人か受け持ってくれ!」

「オーケイ」

 フレッドがドッジボールを持つ。

「僕が4人受け持つよ!」

 アリウスは自分の手で1つ、魔力で4つボールを持つ。

「先にルール破ったのそっちだからね!」

 アリウスが魔力で4つのボール4人相手にぶち当てていく。そして自分の手に持った1球で5人目をKOする。

「おいおい、俺が倒す分とっとけよアリウス」

 フレッドはそうごちりながら腰をひねってサイドスローでボールを投げる。妙な回転がかかり受け取れずに1人KOできた。

 ミハエルは…………

「こんなに近くでわたしとやり取りしたいのかい?」

 リーダー格の男と1mの距離で睨み合っていた。

 ビュン――――――――――!

 ビュッ――――――――――!

 二人とも同じタイミングでボールを投げる。

 ゴンッ!

 2つのドッジボールがぶつかり明後日の方向に飛んで行く。

 相手のリーダーとミハエルも近くに落ちてる球を拾う。2人とも今度はサイドスローで投げた。相手との距離は2mほどだ

 ビュン――――――――――!

 ビュッ――――――――――!

 2つのドッジボールがぶつかり飛んで行く。

「あぶねっ」

 ミハエルがそう言葉を漏らし体をひねって避けた。体が柔らかいのがわかる。

 さすがに1~2mで高速の攻防は怖い。

 ビュン――――――――――!

 次は相手の方が早かった。

 ビュッ――――――――――!

 ミハエルは焦らず、利き腕の左の封印を解き左を使い今までより超高速でボールを投げる。相手より遅く投げたにもかかわらず2人の中間点くらいでボールが激突する。

「おっっっっらぁ!! 利き腕解いてやるわ!」

 声も上げ始めるミハエル。投げる一瞬だけ鬼気迫る表情になる。

「はぁい! 余裕余裕! チ〇ポーーーーー! 左利きに勝てると思うな!」

 敢えて相手が次投げてきたボールを目の前で相殺し、素早く避けるミハエル。

 興奮したのか全力でチ〇ポと叫んでいる。

「今相手バグってたぞ。体勢立て直すモーション抜きで次撃ちやがった。まるで時間スリップしたみたいに」

 相手の人間としておかしい挙動を指摘しておく。まぁ人間じゃないんだけど相手。

 ビ、ビュン――――――――――!

 相手が一瞬恐れをなしたかのように投げるモーションを一瞬止める。

「どうしたぁ!」

 今度は相手の目の前で2つのボールがはじけ飛ぶ。

 相手のリーダーは手を顔の前にやって、防ぐ仕草を取る。

 防ぐ瞬間、リーダーはミハエルの方向を全く向いていない。

 ミハエルは容赦なく右手に持っていた2球目のボールを左に持ち替えてボールを利き腕の左で投げる。

 それは相手の左ひざの横辺りにあたった。

 相手がたまらずもんどりうって倒れる。

「人間のフリがうまいな」

 ミハエルが鼻から息を抜き、そういって力を抜いた。

「すごいわ…………ミハエルさん!」

 東雲波澄しののめはすみが褒め称える。

「正直、危機感は感じてた。めちゃめちゃボール早いわ~相手リーダー、人間超えてるんじゃない。霊気使おうか迷ったもん、VRキャラだから霊気ないけどさ」

 とミハエルは恐れを漏らす。

「どっかの大人の大会の優勝者レベルだろうな。あの速さ。クロードとかでも受けられねえんじゃねえかな。サミュエルじゃあ逃げ惑うのも難しい」

 と、フレッド。

「僕が代わりにやろうか、っていおうとしたけど言うタイミングなくなっちゃった。すごいね、よくやった」

 アリウスがそういう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る