ゲームのスキルを現実で使える!? 盲目の私が「瞳術」を得た結果
ぜん
輝き始める瞳
第1話:一筋の光
ヒカリは、幼い頃から『見える』という感覚を知らない。
生まれつき盲目だった彼女にとって、世界はいつも暗闇に包まれていた。
彼女の家は静かで、両親の優しい声や手のぬくもりが、彼女の世界のすべてだった。
ヒカリの両親は、希望の意味も込めてあえて
最新の医療技術、代替療法、心のケア――あらゆる治療を試してみたが、どれも効果が出ることはなく、ヒカリの視力が戻ることはなかった。
ヒカリ自身も、やがて外の世界に興味を持つことが少なくなり、彼女の世界はますます小さく、閉ざされていった。
その日も、ヒカリはリビングのソファに座り、じっと何もない空間を見つめていた。
彼女の両親は、ヒカリのために何かできないかと様々な治療法を探し続けていたが、最近ではその努力も空しく感じられる。
「何か新しい治療法が見つかるかもしれない」
そう言いながら、父は新しい医療雑誌を片手にインターネットで情報を調べる日々を送っていた。
母もまた、ヒカリのためにと、新しい料理や趣味を試みようとしたが、ヒカリは以前ほど興味を示さなくなっている。
「ヒカリ……」
母の優しい声に反応して、ヒカリはわずかに顔を上げたが、すぐにまた俯いてしまった。
外の世界には、自分に関係のないものばかりが広がっている――そう思い込むことで、彼女は少しずつ自分の心を守ろうとしていた。
そんな日々が続く中、ヒカリの両親はある日、テレビのニュース番組で放送されていた内容に目を奪われた。
「驚異の新技術!仮想世界で現実が変わる!?」と大きく掲げられている。最新のVRMMOゲーム『
ゲームの中で使える魔法やスキルが、現実世界でも実際に使えるようになる――そんな信じがたい内容が次々と映し出された。
画面の端には生放送のテロップが入っているが、手から火の玉が出る人、水の刃を出す人、空を飛ぶ人など様々な紹介がされている。
中でも、彼らの目を釘付けにしたのは一人の少年の姿だった。
歩行が困難だった少年が、ゲーム内で習得した魔法を使うことで、現実世界でも歩けるようになったという映像だ。
「まさか……本当にこんなことが?」
両親は信じられない気持ちで、その映像を食い入るように見つめていた。
テレビの中で、少年は楽しそうに、そして誇らしげに笑っている。
「これは……ヒカリにも何か良い変化があるかもしれない」
母がそう呟いた時、父も同じことを考えていた。
「試してみる価値はあるかもしれないな」
それから数日間、両親はそのゲームについて調べ尽くした。
多くの人々が予約を入れ、すでに売り切れ続出の状況だ。
しかし、彼らの努力と運が味方し、奇跡的に発売直後にゲームを手に入れることができた。
「ヒカリ、ついに手に入れたよ。早速やってみるか?」
ヒカリは最初、戸惑いと疑念を抱いていた。
彼女にとって、ゲームとは視力ありきの娯楽であり、自分には関係のないものだと思っていた。
しかし、最近の両親の活気にあふれた様子に触れ、彼女の中で何かが変わり始める。
「……うん」
ヒカリは小さく頷いた。
彼女自身も何かを変えたいと思っていたのだ。
自分の世界を少しでも広げるために。
その夜、ヒカリは両親と共にゲーム機の前に立ち、初めての体験に胸を高鳴らせていた。
ゲームを起動する前の静寂の中、彼女の心は期待と不安でいっぱいだ。
「本当に……何かが変わるのかな?」
ヘッドセットで頭を覆った状態でベットに横になり、ヒカリはゆっくりと息を吐く。
目の前には何も見えないが、今までに感じたことのない不思議な感覚が胸に広がっていた。
「新しい世界……見てみたい」
彼女の心の中に、一筋の光が差し込んでいる。
そして、ついにVRMMOゲーム『
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