吸血鬼と僕の短い恋話

ルイ

ある日吸血鬼に出会った

今でも鮮明に思い出すことができるあの日

少し雨が降っていて寒かったあの日

ずぶ濡れのまま縮こまっていた彼女と出会った

これは短い僕と吸血鬼の女の子の恋のお話だ


「い......お願い.......」

夢の中だろうか声が聞こえる方向に手を伸ばす

何かの感触がして僕は”それ”を掴む。

その瞬間何かが足りなかった僕と言う存在が満たされるような気分に包まれる

そして穴に吸い込まれるような感覚に包まれて僕は起きる

「夢...か.....」

夢にしては何かを掴んだ感触がまだ残っている、

しかしふと時計を見ると学校へと行く時間が迫っていたので僕は急いで家を出る。

そうして学校に着くと「おはようございます」と後ろから声をかけられた僕が振り向くとそこにいたのは生徒会長の阪口乃蒼さかぐちのあだった。

僕も「おはようございます乃蒼さん」と返し自身の教室へと向かい時間をつぶす。


いつも通りの退屈な時間が過ぎ、先生に手伝いを頼まれ

気づくと夜遅くの時間になっていた。

僕は学校を出ると冷蔵庫に何も入っていないことを思いだす。

「夕飯かわなくちゃな.....」とため息交じりの声でつぶやき

僕は近くのコンビニで鮭と昆布のおにぎりと飲料水を数本買い家へと帰る。

いつも通りの道を歩いていると急に雨が降ってくる。

「しまった。傘持ってないんだよなぁ」と独り言を漏らして走って家へと向かう。

しかしある公園で立ち止まる

立ち止まった理由はわからない。気づくとすでに立ち止まっていた。

僕は吸い込まれるようにして公園へと入るとみる限り僕と同年代ぐらいの女の子だろうか。

どこか神秘的な雰囲気をまとい人間とはどこか違うと感じさせられる銀髪

生気を感じることができない死人のような真っ白な肌

吸い込まれるように怪しげに光っている赤い目

元はきれいだったのだろう今では見る影もなくぼさぼさで泥まみれな白い髪

そして寒そうに震えながらずぶ濡れの体で縮こまっている

僕は彼女に近づき、話しかける

「どうかした?」と同じ高さの目線になるようにしゃがんで話しかける。

彼女は聞き取りにくい小さな声で「お腹......減った.........」とつぶやく

僕はバッグからおにぎりと飲料水を取り出して彼女に差し出す

「これでも食べて」と言うが彼女は首を横にふる

「チガウの.......」そう先ほどより大きい声で言う

「違う?なにが?」と僕は意味が分からず聞く。

すると彼女は人間とは思えない動きで僕を押し倒して覆いかぶさってくる。

「ッ!?何を?」僕は手を動かそうとするが彼女は両手を動かせないように押さえつけてくる。

「ごめんね...これも生きるためなの」と彼女は泣きそうな顔をして僕の首元に顔を近づけて....

「ッ~~~~!?」

歯を突き立て肉を貫通して血を吸い始める。

僕はだんだんと意識が遠のいていき

彼女の香りにつつまれて意識を無くすのだった。

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