第12話 凍えた夜
蛇と見つめ合うこと4秒はたっただろうか。魔法を唱えようかと口を開きかけた所、蛇が真っ直ぐに体を伸ばしてくる。
「っ…!!」
反射的に構えていたナイフを振りおろす。運良く真ん中よりは顔に近い場所に当てることが出来た。しかしナイフを骨まで到達させたはいいもののそれ以上は進まず、抜こうにも蛇にガッツリ捕まってしまい抜けない。蛇はナイフが抜けないようにからだをぎゅっと縮めつつ顔を私の手に近づけようとしてくる。
幸いにも比較的小さな種の蛇なのでナイフの端と端を掴み腕を伸ばせば刃が私の体まで届くことは無さそうだ。左手を刃先に添え両手を力いっぱい引く。蛇も暫くは耐えようとしたが耐えられなかったのかすぐに枝から尾を離す。
私はすぐに左手を離し右手を地面に振り下ろす。蛇の顔をそのまま左足で踏む。蛇の下半身、というのだろうか、兎に角体が大きく波打ち魚のように暴れ出す。
「ヂェメケ、尾先を掴んで抑えてくれないか!?」
「わ、分かった」
震えながら抑えに入るヂェメケを横目に俺はナイフの背に左手を添え全体重をかけて蛇の体を断ちにかかる。そうすると意外とすんなり刃が進む。数秒後に蛇は息絶えヂェメケと目を合わせほっと息をつく。
「怪我は無い?」
「俺は、なんにも出来てないから…」
「助かったよ?ヂェメケが居てくれて、助かった」
「っシスは…怪我してない?」
「あぁ。おかげさまでぴんぴんだ」
「良かった。ありがとうシス」
「おぉ!へへ、今日は肉が食えるな〜ラッキーだよ」
「えぇ、蛇って美味いのか?」
状況に見合わない雰囲気で進む会話。なんとなくヂェメケも俺もそうしなくては耐えられない予感がしていた。
途方もないほど歩いた。蛇を食べネズミも食べ、時には幼虫だって食べた。
辿り着けた村では俺たち子供の2人旅を訝しい目で見られ、居てもたってもいられずヂェメケ用の槍と盾代わりの鍋の蓋と鞄に6日分のパンや日持ちする根菜を買い足しすぐに村を出た。
その結果、俺らは道に迷う羽目になった。寒さもどんどん厳しくなり濡れて冷えた体で無理して進んだ結果俺は、俺らは2人共、熱で身動きを取れなくなってしまう。
「シス、シス、しっかりしろ…!はあはあ……」
微かに聞こえる声に返事をしたくても思うように体が動かない。
「せめてもう少し、雨風を凌げる場所に……」
ヂェメケは必死で、どうにかどうにか生きようと小さな希望を頼りに、絶壁沿いをシスを支えながらたどたどしい足取りで進んでいく。
「はあはぁ…こういう崖には、洞窟とか、あるだろ普通…!」
「ごめ…ん、俺、はあはあ」
「なんっ、で…そういう…!はー喋らせんな、喋るな」
「ここ、魔力濃い、木も…深くなってる……?」
「え、あ、本当だ…これやばい??」
「かも〜…」
もう無理かもしれないと思った時希望が見えた。
「ねぇ…シスあれ!ウロ、かな」
「ん…分かんない。でも、魔物っぽい魔力は、感じないから……」
それだけ言ってシスは意識を手放した。ヂェメケはシスの言葉を信じてできる限りのスピードで大きな、シスとヂェメケが両手を広げても囲めないような大木に近づく。
「ウロ、だ助かった」
兎に角安全だけはと必死にシスのカバンからテントを取りだす。設置等は何もせず広げただけの状態でシスを中に入れ自分も入り、入口を締める。
ヂェメケも意識を手放しそうになるが濡れた服のままでは悪化すると思い必死で服を脱ぎシスも脱がす。脱がしている途中で違和感を覚えたがその違和感が何かも分からずに眠りについた。
1月4日の寒い、寒い夜の話であった。
ね床を求めて-根無し草- 御飯田美味 @Watashi_to_Koguma
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