おやすみなさい

…もしもし?

あぁ、キミか。

一体どうしたんだい?こんな時間に。

どうしても眠れないから電話をした?

…いや、気にすることはないよ。

わたしは大丈夫だから、キミが眠くなるまで付き合ってあげるよ。


で、どうして眠れないんだい?

気が高ぶってしまって目が冴えた?

…まったく、どうせキミのことだから、仕事のことばかり考えていたんだろう?

せめて寝るときくらい、仕事のことを忘れてみてはどうなんだい?

いろいろと気になることがあるんだろうけど、こんな時間にそんなことを気にしていても仕方がないじゃないか。

今すぐ片付けないといけないことがあるわけじゃないんだろう?

まぁ、何事にも一生懸命なのが、キミのいいところでもあるんだけどね。


でも、せっかく電話してきてくれたんだから、今は仕事よりもわたしのことを考えてくれてもいいんじゃないかな?


ああすまない、そう言う意味じゃないんだ。

キミのことはよく知っているから、そんなことはないことくらい解っているよ。

とにかく、のんびりと話をしようじゃないか。

子守歌…という柄でもないから、話すことくらいしかできないからね。

…子守歌よりも、わたしの話を聞いている方が気分が落ち着く?

…そう思ってくれるのは嬉しいよ、ありがとう。

だったらなおのこと、キミをきちんと眠らせてあげないといけないね。


さて、どんな話をしようか。

キミがちゃんと眠れるような話をしないといけないしね。


むかーしむかし、あるところに…


ああ、すまないすまない。

これじゃあ先が気になってしまって、却って目が冴えてしまうね…


じゃあ、次は…




そう言えばこの間、プラネタリウムに行ったろう?

あれは楽しかったね。

街中では見られないほどのたくさんの星々と、それにまつわる色々な話。

シートは平らになるくらいまで倒れて、まるで地面に寝転がって見ているようで心地よかったよ。

ついつい時間を忘れてしまいそうだったよ。


いつかそのうち、二人で本物の星を見に行きたいね。

どこか空気の綺麗な場所に行って。

夜空の下でご飯を食べて。

食事の後は地面にごろりと寝転がって、お酒を飲みながら星を見て。

そしていつの間にかうたた寝をしてしまって…

仕事のことなんて忘れて、二人で夜空を見て過ごすんだ。

気持ちよさそうじゃないか。


…あれ?

聞こえているかい?


ふふ、どうやら気持ちよく眠れたようだね。




…もう聞こえているかどうかわからないけど。

おやすみなさい、いい夢を見るんだよ。

それじゃあね。

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