第45話 晩夏の装い

 デロデロテロデロ……

 洞窟内に響くドラムロール。

「本当にやるのかい?」

 デロデロテロデロ……

「もう少し休んでからでもいいんじゃない?」

 デロデロテロデロ……

「そういうわけにも、いかないのよ……」


 3百年後に起こるかもしれない事件を防ぐために、あらゆることを調査する!


「というキャッチコピーのもと、物語は紡がれるわけで」

 デロデロテロデロ……

「確かに、調査してるイメージは薄いね」

 スコップの洞窟にはダーツがある。

 まだシズカが五割以上時空監察官だった頃、真面目に何処にカチコムか決めるために、スコップと二人で作ったものだ。ちなみに禁断素材を使いまくったため、今の地球では売却不可だ。

 デロデロテロデロ……

「だから!」

 デン!

「私は、闘わなければならない、の!」

 シズカさんは完璧なスローで矢を投げた。

 矢は美しい軌跡を描き、豪華な的に当たる。

 ワン!

「あ、大当たり?」

「大当たり?」

「そうそう。ボードがワンと鳴いたら大当たりだよ。102番、ここの住人は「マトモ」だ。良い人だよ。人ではないけど」

「いや、人じゃない時点でもう……」

「ちなみにこの星の生き物だよ?」

「……バトル成分なし?」

「無いね。バトルしたら、僕怒るよ?」

「だったら放っておいて、次行こうかな……」

「だめ。君はもうちょっと落ち着いた方がいい。話し合いとかも積極的にさ」

 穏便に済むというのに、どうして不満なんだろう。

「僕も一緒に行ってあげるよ。初見だと殺しかねない……どういう心配してるんだろう、僕は」

 ホントだねえ、初対面の印象が良くなければ殺されるなんて、未来はどんなディストピアだ。

「手土産はいるかしら?」

「お?まともな思考だ。そうだね、和三盆とか好きかもしれない」

「和三盆。【検索】……早速買いに行こう。ね、スコップ」

「僕も行くのか?」

「デートだよ、デート!」

 シズカはショルダーバッグからスマートフォン、ミャウドライバーを取り出した。

「シズカ、ドレスアップ!」

 ニャーン

「ええ!?」

 謎の光にシズカの全身が包まれ、海高指定ジャージ姿からカタダシショーパンニーソツインテへ華麗に変身!

「ほら、スコップも」

「し、仕方ないなぁ……ちょっと待ってて」

 自宅に戻るスコップ。少しウキウキして。

 

「お待たせ」

 シズカが例のドリンク、秋味、を飲み終わる頃。ようやくスコップが戻ってきた。

 何ということでしょう!あの大正ロマンに傾倒していたスコップがなんと、ヘソダシショーパンナマアシミツアミへ大変身!

「うぉ!こいつは可愛エエ!」

「ちょっと、揃えてみた……」

 いつも海高セーラーか最近は袴だったので、スコップが足を露出するのは何気に初。

 

 では出発だ。残念ながら商店街の和菓子屋さんには和三盆なんておしゃれなものは置いていないので、街に出るしかない。もしかしたら南区の街にもないかもしれない。その時はSSシズ・スコガールズが中央に進出する事になるのだ!

 学校が始まった町は人の姿もまばらで、寂しささえ感じる。そんな商店街を冷やかしながら歩く美少女2人はあっと言う間に黒猫の会の庇護対象となった。特にシズカさんの横を歩いている美少女は誰だ?と騒ぎになる。統合された会の名称は後日の自治会の集会で決められるのだろう。


「いい買い物ができた」

 スコップは運ばれてきた冷たい水を一口飲んで嘆息した。

「和三盆も無事手に入れたし、秋物も見繕えた」

 向かいに座るシズカの横には結構な量の紙袋が置かれていて、スコップも同様だ。

「僕は洋服はほとんど買わないから。優しいお姉さんで良かったよ」

「ふふふ、またお揃いで出かけよう」

「……気が向いたら」

 喫茶グリモワールでキャッキャする美少女二人。まさかいつも騒がしい二人組だとは常連も気付かず、目と心の保養をしている。

 水を運んできた給仕の少女も、頬を染めて二人をうっとり見つめる。

「タルトの日の再来……それ以上ですわ!先輩もシズカさんも人外の可愛さです!僕っ子のデレを拝めるなんて……ご飯お茶碗三杯はイケル!」

「三井さん、お仕事中。それよりも学校はどうしたの?」

「ナマアシナマアシナマアシナマアシ……」

「ダメだ。心がどこかに行ってやがる」

 シズカの問いかけにも何かブツブツ言うだけの三井さん。シズカから見ても良い足なので、気持ちは分からなくもないが。あの細さがたまらん。

「それじゃ、ここでお昼したら直接向かおう。あ、コラ。足に触るな」

「マスター、注文取りに来てよ~。それでこの子連れてって~」 

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