第44話 突然の終わり
「突然ですが、夏休みは今日で終わりです」
町内放送で、海辺高校の教頭の美声が、町中に響きわたる。
「教団」とのバトルでなんか暑い雰囲気が飛んでいったらしい。
季節はすっかり秋。とはいかず、やや暖かい海辺町。だけど油断して腹出して寝てた猫姉さんは風邪を引いた。
「よ、よしここは!山田に看病してもらおう!」
鼻をすすりながら、何か邪なことを考えているようですが……懲りないね。
「え、無理だよ。明日から学校。フルタイムだよ」
山田に頼んでみたら、即答だった。
そう、山田は夏休みの間のお世話係。彼女がシズカを構う必要はなくなったのだ。これがCOOL!ということだ。現代っ子世にはばかる。
スイレンも佐久間も最近来ないし、もう少し知り合いを増やしておくべきだったとシズカは後悔していた。
つまり、今日からはシズカは一人で生きていかねばならない。
「……余裕だし」
シズカはとりあえず風邪を治すことにした。
超回復という手もあるが、あれはあまり使うべきではない。一人暮らしの病気はかなりのピンチの予感だけど、何とかなるだろうとシズカは思うことにした。風邪は引き初めが大事。
地球人の薬は使えない。似てはいるけど、ご先祖からして違う仕組みの生き物なのだから。
スコップも頼れない。おかしな薬の実験台にされるだろう。あんな薬をばら撒いている以上、敵に回ったと考えた方がいい。ちょっと寂しい。
この町に来てそんなに長くはなかったけど、友達だったり大好きだったり。良い関係を築けていたと思っていたのにな。終わる時ってこんなにあっさりしてるんだ。嫌われたんだろうか?元々期間限定で私のことなんか興味がなかったのかもしれない。
ちょっと泣いてから買い物に行こう。
起きたら夕方だった。
不思議なことにいつの間にか着替えていて、布団で寝ていた。
「にゃ……」
「あ、シズカ。起きたかい」
「スコップ?」
「姫もいるよ。シズカが心配だから見に行ってって言われて見にきたら、倒れてるんだもん、ビックリしたよ」
毒の後遺症かと思った焦ったよ。
スコップは冷や汗タラタラだ。
「すごい熱で汗もすごかったから、ゴメン、剥いた」
そして拭いた。
「にゃ!?」
「弱るとニャーニャー言いがちか。なる程」
「山田は?」
「シズカのおっぱい見たら鼻血吹いて倒れたから、あっちで休んでる」
「ニャー!」
君達は似たもの同士だよ。
「……どうして?みんな私のこと嫌いになったんじゃなかったの」
「どうしてって?誰かに何か言われたの?」
「だって、山田は私の相手できないって言うし」
「ああ、この国の学生は大変だよ。学校が再開したら、ほとんど全ての力を学校に費やさないとついていけない。学業もだけど、人間関係とかもね」
長い間海高の生徒を見てきたスコップだ。色んな生徒がいたに違いない。
「スコップは、私に毒注射するし」
「……好きでもない相手に、毒なんて打たないよ、普通」
「え……そう?」
「そうそう」
ウソウソ。
まあ、好きってのは嘘ではないが。毒の作成はスコップの商売であり趣味だ。
来客は縁側からも現れた。
「シズカさん、風邪引いたって?お見舞いにきたよ」
「本当に……姉さんも病気するんだな」
「そりゃそうでしょ。デタラメに見えるけど、以外と華奢なんだよ」
「そんなもんか。あ、これ親父から差し入れ。寿司屋のプリン」
「シズカさん、大丈夫?」
夏の間世話を焼いた小学生達が生け垣の向こうからのぞき込んでくる。
「しんどかったら、また家にくれば良かったのに」
「みんなで鶴を折ってきたよ~」
「嫌われてはいないようだね」
「にゃ……」
シズカはお布団を頭から被ってプルプルした。
「早く治すことだね」
ずびずび聞こえるのは、風邪のせいか?
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