俺の家に居候する事になった許嫁の美少女がエッチな同居生活を望んでいるらしい?

譲羽唯月

第1話 露出度高めの彼女は、許嫁⁉

 平日の放課後。川本瑛大かわもと/えいたは部室棟の部屋にいた。

 同じ部屋には、クラスメイトの水谷桜みずたに/さくらもいる。


 桜とは高校生になった時からの友人であり、高校二年生になった今でも仲の良い関係を続けていた。


 今、黒髪ロングヘアの美少女な桜と部室に二人きり。テーブル前の椅子に隣同士で座り、小説を読んでいる。

 瑛大が在籍している部活は文学系で、小説を書いたり、本の感想を書いたりして、色々な文学に触れるという活動をしているのだ。


 そんな活動をする過程で、瑛大は彼女に伝えたいことがあった。

 けれど、その想いを伝えてしまうと、今まで築き上げてきた友人関係が崩れそうで、そんな勇気など出せず日々の学校生活を送っていたのである。




「じゃあ、今日はもう終わりにしよ!」


 静かな空間を払うように、部室に入ってきたのはショートヘアスタイルの部活の先輩だった。

 部長である神谷実里かみや/みのりは文学部とは思えないほどに声が大きい。

 体育会系でも通用するほどの声質であった。


「でも、今日までに本の感想を書くって先輩が」


 椅子に座っている桜が首を傾げていた。


「そうなんだけど、もう遅いし。顧問の先生も言ってたんだけど。今日は早めに学校を閉めるんだって」

「そ、そうなんですね」



 桜は現状を把握して頷いていた。


「そういう事なら俺も帰りますね」


 瑛大も彼女と同様に帰宅するための準備を始める。


「私は部室の後片付けをしてから帰るからさ。さ、早く」


 二人は先輩に急かされるように部室から廊下へ出る事になったのだ。




「瑛大って、今、どんな作品を読んでるの?」


 夕暮れ時の通学路を二人で横に並んで歩いている。


「ライトノベル的な作品なんだけど」

「そうなんだ。それ、瑛大的には好きなの?」

「まあね、昔から読んでいるシリーズ作品だからね」

「私も新しい本を買いたいんだけど何がいいか悩んでいたの。瑛大みたいに自分に合うシリーズ系の小説があればいいんだけど……そうだ、今度の休みの日でもいいから一緒に本巡りでもしない?」

「そ、それはいいね!」


 瑛大は勢いよく承諾するように頷いていた。

 むしろ、彼女からの誘いを断る理由なんてどこにもないのだ。


 一緒に遊べる日があるのなら、その日に想いを伝えようと思い、ある程度今後の話をした二人は通学路の十字路のところで別れ、各々の家に向かって歩き出す。




「ただいまー」


 瑛大は家に帰るなり、玄関先で靴を脱ぐ。

 いつも通り、そこまで深く考えずに脱衣所まで向かい、その扉を開けた。


「え?」


 扉の先には、一人の女の子が佇んでいた。

 しかも、お風呂を上がったばかりなのか、ほぼほぼ服を着ていない状況であり、一応はバスタオルで大事な部分は隠れてはいる。


 だ、誰⁉


 そんな感情もあるのだが、それ以上に女の子の裸体を見てしまった事に驚き、慌てて扉を閉めてしまったのである。


 え……だ、誰だったんだ?


 そんな想いを抱きながら瑛大は脱衣所の近くの壁に背をつけ、一度冷静に考え込む。

 けれど、まったく彼女の事がわからない。


 親戚の子かとも思ったのだが、さっきの子は本当に知らないのだ。

 何度も過去の記憶を掘り起こすように考え込むが、その子が誰なのかという結論には辿り着けなかったのである。




「ねえ」

「……え?」


 気づいた時にはお湯で濡れたロングヘアスタイルの、その子が隣にいて、瑛大の顔を覗き込むように見つめていた。

 しかも、バスタオルで裸体を隠している程度で少しだけ谷間が見えている。


「な、なに⁉ と、というか、不法侵入じゃないか?」

「え? そんなわけないじゃない」

「だ、だって、俺、君のこと知らないし」

「知らないってことはないと思うけど」


 その子は恥ずかしがる素振りもなく、瑛大の事をまじまじと見ている。


「そんなに気にするなら、あなたの両親にでも聞いてみたら?」

「あ、ああ……そ、そうだよな。そうだな……親に確認すればわかる事だよな」


 瑛大は不覚にも彼女から真っ当な指摘を受け、素直に納得してしまう。


 瑛大はスマホを片手に母親に電話する。


『え、女の子? あの子ね。じゃあ、今いるってことね』

「う、うん……でも、お母さんは知ってたの?」

『知ってたも何も、昨日の夕食の時に、その事を話したじゃない。知り合いが来るって』

「え……あ、あの話か。でも、同い年の子だとは思ってなかったし。というか、この子はいつまでいるの?」

『その子はあなたの許嫁だから』

「……え? い、許嫁⁉」


 瑛大は目を丸くし、素っ頓狂な声を出し戸惑っていると、突然、隣にいた彼女が瑛大のスマホを取り上げ、勝手に母親と話を進めていたのだ。




「まあ、そういうこと。わかった?」

「え、う、うん……?」


 母親との会話を終えた彼女が瑛大にスマホを返してくる。


「だからね、今日からよろしくね♡」


 彼女は簡単にウインクしていた。


 そんな彼女の仕草に、不覚にもドキッとしてしまう。


「ほ、本気か。本気で同居する気なのか?」

「そうだよ、だって昔約束したでしょ」

「は? そんな記憶すらないんだけど」

「でも、そういう話になってるのッ」


 いや、意味が分からない。

 そもそも、こんな事になるなんて全然聞いてないんだが……。


 瑛大は予期せぬ事態に頭を抱えてばかりだった。


「私、今から夕食を作るね♡」

「なんで?」

「だって、将来結婚する予定なんだから、今から未来を想定して生活しないとね」


 彼女は再び脱衣所に入ると数秒後には出てくるが、裸にエプロンをしただけの姿。

 しかも、先ほどよりも露出度が上がっているのだ。


「私、瑛大の為なら何でもしてあげるから! それと私はノノ。簡単に呼んでくれればいいからね」


 簡単な自己紹介を済ませたノノは、脱衣所近くの場所から家のキッチンがある方へと駆け足で向かって行く。


 なんでこんなことになってしまったんだろうか。


 瑛大は脱衣所に置かれたカゴに今日使った体操着を入れると、一度、現実的に考えるために自室に向かう。


 一時間ほど部屋に引きこもり考え込んだものの、どうしても彼女が家にいる現実とは向き合うことができなかった。


 それから自室に裸エプロン姿のノノがやってきて、ほぼ初対面の彼女と夕食を共にする事になったのである。

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