オレンジ
朱音
第1話
ジメジメとした湿気を含む暑さはまだ続く。パジャマが肌に張り付いているのを感じて、私は重い身体を起こした。せっかくの日曜日だ。どこか出かけようと、私は先週の日曜と同じ服に着替えた。適当に珈琲でも、と駅に向かっていると近所の劇場でビラ配りをしている青年が見えた。ここ下北沢は劇場が点在する演劇の街である。この青年は俳優の卵といったところだろうか。以前から劇場には興味があった為、青年からビラを受け取ろうとすると彼はひょいと手を引いた。
「オネーサン劇場来るの初めて?」
見た目に反して軽そうな言葉遣いに私は少し身構えた。まあ・・・と言葉を濁す私に彼は話を続ける。
「この作品、正直つまんないよ。それよりオネーサン猫好き?俺猫飼っててさ、すっげえ可愛いの。見にこない?」
一貫して続けるオネーサン呼びが鼻につくが、変わらない日常に飽き飽きしていた私は馬鹿なフリをしてみることにした。
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