メモリ No.200

おるか。

No.1

「――まあ結局、なんにも取れなかったんだけどさ?」

「何しに行ったのかわかんないわ……え、何で撮ってんの」

「んー……なんででしょ」

「えやめてよ。恥ずかしい」

「いいじゃん。わたしとふゆちゃんの仲じゃん?もう恥ずかしいとか思う時期終わったでしょ」

「……まあ?やでもそれとこれとは話が違うから。止めて」

「えー……せっかくのナンバーワンなのに……」

「はいはい分かったから止めて………………止めてよ」

「もう止めたよ」

「嘘。そこ光ってる」

「これ違うもん。充電の残量表示」

「はい嘘」

「何で」

「今首かいた。ゆづるが嘘ついたときの癖」

「えきっしょ。なんで分かるんだよ」

「やかましいキメ顔ね」

「ねーお願いお願いお願い。何となくで買ったから使い道これしかないの」

「何で何となくでビデオカメラ買っちゃうのよ。だから欲しいときに欲しいもの買えないんでしょ」

「だってほしいと思ったその時に買っとかないと一生ほしいなんて思わないかもしれないじゃん」

「全然わかんないわ」

「ねえいいでしょ?減るもんじゃないし」

「……仕方ないなぁ」

「やっったありがとう神様仏様ふゆか様!」

「もうわかったから早くそれ食べなよ。溶けてるよアイス」

「あやばっ」

「も一回置きなよそれ」

「うん」

「――――いつ買ったのそれ」

「先週…だったかな。ケーズデンキで」

「また何をしにそんなとこ」

「買い物以外ないでしょ。単三電池もう無くて買いに行ったの。そしたら、これセールになってて。新生活応援セール的なの」

「はあ」

「でもSDカード買ってないんだ。だから撮れるのは本体目盛りの分だけ」

「え?何で買わなかったの」

「限りがあった方が面白いじゃん?まあパソコンとかに移せばまた撮れるから」

「ふーん……」






「二百」

「……えなにが」

「本体だけでもとっとけるデータの数、全部で二百まで」

「……どんなに一本一本が長くても?」

「うん。全部めっちゃ長くても、二百本まで」

「どうゆう理屈なんだろ」

「さあ………ごちそうさま」

「やっと食べ終わった」

「ごめんねここのパフェ大きいんだもん」

「知ってるよ。てか知ってて頼んだんだよね?」

「や、初めて知った。そして初めて食べた」

「そうゆう謎に勇気あるとこ好きよ」

「え照れる」

「褒めてないよ」

「じゃ、という訳で。記念すべき一本目は、ふゆかと喫茶店デートしてみた、でしたー」

「久々にふゆかって呼ばれた」

「呼んでみた」

「あそ、すみませんお願いします」

「お預かり致します」

「……え止めないの?」

「うん」

「店員さん映しちゃダメだよ?」

「ん」

「……お待たせ致しました、ホットコーヒーと喫茶きかんしゃパフェがお一つずつで、お会計千二百五十円です」

「はーい、ゆづ、お金」

「家で渡す」

「ん、じゃ、これでお願いします」

「はい。千五百円、お預かり致します」

「……後でちゃんと返してね」

「ん」



「二百五十円とレシートのお渡しです。またのご来店、お待ちしております」

「ごちそうさまでしたー、ちょなんで後ろ行くの」

「わたしが前いったらふゆちゃん映んないもん」

「面倒臭いなぁ……ゆづこの後は?」

「ん?特にないよ」

「じゃあ帰るか。あ、スーパー行かなきゃ、今日の晩御飯が無い」

「パスタにしよ」

「そうね、簡単に済ませましょ。行くよ」


「――このカメラのメモリがいっぱいになる頃、わたし達、どうなってるんだろ」


「何か言った?何突っ立ってるの」

「いや、何でもな――」

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