巫女様物語 ~因習村で死亡フラグをぶった切れ!~

@yukiji0609

第一話①

――七つまでは神さまの子。


 それはこの村に伝わる伝承の一つだ。曰く、七つを超えるまでは神の子であるから丁重に扱わなければならない。それを超えたら神に報告して、迎えを寄越さないように伝えなければならない。そうしないと、夏祭りの夜に連れ去られてしまうのだと。あまりに大人が神妙な顔で語るので、幼心にただごとではないと感じるのだろう。誰一人としてそれを疑う子供はいない。不思議なことだ。いくらかは異を唱える子どもがいてもおかしくないというのに。大体神隠しってなんだ。大事件だろう。


 かくいう私も、先ほど七歳の誕生日を迎えるまでは信じて疑っていなかった。実際、夏祭りの夜の神隠しは実際の話だったし、疑う余地なんてなかったのだ。なんの疑問もなく、この村の風習も伝承もすべてが正しいと思っていた。そう、さっき、満七歳となる朝を迎えるまでは。




「…と、とんでもないことになってしまった…。」




 現実を飲み込んで肩を落とす。鏡に映る自分の姿と、寝起きで二段ベッドにぶつけた頭の痛みがこれを現実だと叫んでいた。夢で見た知識は自身の身体へと溶け込んでしまったらしい。激突した痛みと、それ以外のことで痛む頭を抱えながら私は大きなため息をついた。


 先ほど七歳を迎え、晴れて現世の仲間入りを果たした私は長い夢を見た。ほとんどが視覚情報のみの、映画のような夢だった。…夢と呼ぶには、質感があまりにもリアルだったのだが。夢の中で私は大人で、画面の中の何かを見ている。そこに映るのは見目麗しい異性のキャラクターたち。ガチャガチャとコントローラーを動かしながら、彼らと物語を紡いでいく。画面の向こうの背景はよく見知った風景だった。そう、この、ちっぽけな村。神隠しの伝承のある、地図にも忘れられた村。そこで繰り広げられるのは、人間同士の愛憎劇やら政府の陰謀やら…そしてなにより衝撃だったのは。




「わたし、かみかくしでしんじゃうかもしれない…!」




 ――自分の余命宣告(仮)である。


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