妄想のお盆
鷹山トシキ
第1話
8月12日、地元に戻ったのは夜遅く、みんな疲れた様子だった。弟のイライラも少し収まったようで、車の中では軽い雑談が交わされた。帰り道、コンビニに寄って飲み物を買い、家に着くとすぐに荷物を運び込んだ。
帰宅後、みんなでリビングに集まり、那須旅行の思い出話を少しした。俺は座りながら、那須で買った煎餅をみんなに配った。コハルは買ったお菓子を見せびらかし、得意げに説明していた。おふくろは「那須は久しぶりだったけど、楽しかったね」と言って、満足げに笑っていた。
その後、風呂に入り、全員がそれぞれの部屋でゆっくりと過ごす時間が訪れた。俺はリビングに戻り、テレビを見ながらリラックスしていたが、やはり那須の景色が頭を離れなかった。特に、貸し切り状態の露天風呂や、囲炉裏のある古民家風の定食屋が印象に残っている。心の中で「また行きたいな」と思いながら、静かに夜が更けていった。
翌日、8月13日、再び日常が始まる。朝起きると、何となく那須旅行の余韻が残っていて、少し名残惜しい気持ちになったが、また次の計画を立てる楽しみもあると感じた。朝食を軽く済ませ、家族それぞれが予定に向けて動き出す。俺も今日は仕事の準備をしなければならなかったが、心のどこかで「次の旅はどこにしようか」と考えていた。
那須でのひとときは、家族との絆を深める時間となり、これからも一緒に思い出を作り続けたいと思った。これからの日々も、楽しいことを見つけながら前向きに過ごしていこうと、新たな決意を胸に抱いた。
8月13日、朝のひんやりとした空気が心地よい。朝食を終え、家族それぞれが出かける準備をしている中、俺は那須での楽しい記憶を思い返していた。那須の杉並木を歩いた時の心地よい風、あの静けさと冷たさが心に残っている。そんなことを考えながら、午前中の予定をどうしようかと考えていた。
ふと、ルアーロッドが目に入った。久しぶりに釣りにでも行こうかと思ったが、今日は少し疲れが残っている。結局、家でのんびりすることに決めた。だが、じっとしているとまた何かしたくなり、スマホを取り出してドラクエウォークを起動した。今日は新しいイベントが始まっている。暗い洞窟を探検するクエストがあり、これがまた面白そうだ。結局、部屋をうろうろしながらゲームに夢中になってしまった。
昼前になると、外に出る気分になった。車に乗り込み、近所のアイスクリーム屋に向かった。那須で食べたアイスが忘れられなくて、無性にまた食べたくなったのだ。店に着くと、あの懐かしい味を求めてバニラアイスを頼んだ。甘く冷たいアイスを舌に乗せると、那須の涼しい杉並木がふっと蘇るようだった。
アイスを食べながら、そのまま車を走らせ、少し遠出することにした。車を進めると、霧が少しずつ立ち込めてきた。目的地に到着した頃には、辺りは白い霧に包まれ、視界が暗く狭まっていた。俺は車を降り、霧の中を歩いてみた。那須の静寂とは違い、この霧の中には少し不気味さが漂っている。静寂がやけに耳に響く。
霧の中を歩いていると、ポケットに忍ばせていた小さなリキュール瓶が気になった。那須のお土産屋で買ったもので、特に今日は飲む予定もなかったが、霧に包まれたこの場所で飲むのも悪くないと思った。少しだけ口に含むと、甘く強い香りが鼻に抜け、体がぽっと温かくなった。霧の冷たさとリキュールの温かさが妙に心地よい。
その後、再び車に戻り、霧の中を走らせながら家路に着いた。道中、ルアーロッドを取りに家に戻ろうかと迷ったが、今日は無理をせず、このまま帰ることにした。家に戻ると、夕暮れが近づき、窓から暗くなり始めた空が見える。
一日の終わりに、那須の旅行と今日の静かな時間を振り返りながら、再びドラクエウォークを起動して、洞窟の探検を少し進めた。暗い洞窟の中を進む冒険が、今日の霧の中の散歩と重なり、どこか不思議な気分になった。
明日もまた、何か新しい冒険を見つけようと思いながら、ゆっくりと眠りに落ちていった。
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