第29話無知

2日後


平井が中国でテロを始めてから、報道の知らせは鳴り止まない。


現場のカメラマンが残した数秒の映像を見て、壱ノ瀬は新井に話しかける。

「あれ、ホントに澪なの…?なんかおかしいよ。人に化け物として見られるのを、嫌われるのをものすごく恐れていたのに……。なのに、あんなにわらいながら、人を殺してる」

「……本人は変身の影響って言ってたけど正直無理があるような気がするな……」

「うん……大丈夫かな」


EP29 無知


平井の報道を見ながら、藤田が男に話しかける。

「今更なんですけど…なんでテロ起こすんですか?第三次世界大戦の影響で現状日本が不況なのはわかってます。でもちょっと強引過ぎるというか……」

「強引だが、計画はある。子供っぽくてさらにバカらしく聞こえると思うが、この国は世界征服をする」

「ははあ………。いや、もし仮に化け物に世界征服をする力があっても、他国の多様な文化が失われるのは文明的にもまずい気がするんですけど…」

「なにも全員殺すってワケじゃないぞ。現在の技術では平井含め化け物を完全駆除すること、防御システムなどを整備、徹底することが短期間では不可能。しかし純製の化け物の肉を使えば人間でも化け物の力の一部を利用することが可能。なので一ヶ月間化け物の力を他国に向け国内では化け物の未知部分を解明することを急ぐ。また化け物の力を他国に利用することは許されない。繁殖は時間を掛ければできる。苦肉の策だが無理矢理の平和利用だ」

「………なんで他国に渡したらダメなんですか?国際的に合同管理することだってできるじゃないですか」

「それは自己中思考からだ。お前が言った不況の脱出だよ」

「……………」

「ま。俺も上が決めた命令に従っているだけだし、お前らもそうした方が良い。それで飯食えるんだからな」

「そうですね…」

「とりあえず明日には着くから準備しとけよ」

藤田達は返事をする。


藤田はイトの方をチラリと見る。

帽子が変わっているが、アイツは俺に肉を渡した青年じゃないか?。話しかけてこなかったから違うのだろうか…。


次の日


「着いたぞ。一ヶ月後くらいに迎えに来るから飯はテキトーに食って…とにかく人殺しまくれ。じゃ」

藤田、イダ、イトの3匹は飛行機を見送った。

「久しぶりですね、藤田さん。どうですか。バケモンライフは」

イトが急に話しかけてきたので、藤田は肩を震わせる。

「あ…、、どうも久しぶりです。楽しいですよ、非日常感があって…。初めての外国旅行もできたし……」

「はははは。じゃあ僕はイダとこっちで狩ってくるんで、それじゃ」

「はい…」

イダイト、藤田で別れ、それぞれ殺しを始めた。


イダが歩きながらイトに話しかける。

「なぁ、なんで藤田に敬語使ってんだ?計画は進行してきてるし、もう人間に敬語使う必要なくね?」

「初対面が敬語だったから抜けなくてさあ…言うて俺ら年下だし敬語の方が楽なんだよね」

「ふーん」

「とりあえず飯食ってから。始めるか。どこ行く?」

「どこでも良いよ。俺はもう殺し始めたいし」

「まぁまぁ。そんな焦んなよ。一ヶ月ってまあまあ長いぞ」

「そう…?俺ラーメンが食いたい」

「ん、じゃあちょっと探すか」

「それよりママのこと聞いた?」

「うん。ラヴァがやったんだろうけど、計画ぐらい聞かせてくれてもよかったのにな」

「あぁ…グレリフはもう生まれてこないんだよな」

「そうだな。俺らの最終的な目的が同じなら良いんだが…。グレリフはかなりの戦力だったし、平井澪の特異性がまだハッキリしてないし…。あんなたいそれた行動するにはちょっと速い気がするよな」


そのころ藤田はパンを片手に、散歩しながら人を殺す。

「うぎゃあああぁ」

藤田は殺した人間の叫び声を聞いて、最後の言葉がそんなんでいいのか?と疑問に思う。

「うーん…これで27人目かぁ。こんだけ人がいるから100とかすぐだと思ってたけど、時間かかりそうだな」

藤田はため息を吐いた後、触手で建物を破壊する。


一方日本。


壱乃瀬と新井が二人でテレビを見ていると、ドアがノックされる。

「はーい」

壱乃瀬がドアを開けると、そこには杜若とラヴァの姿があった。ラヴァは手に持っていた袋から何か小さな肉塊のようなものを2つ取り出し、壱乃瀬の方に向ける。


「これを、あなた達に食べて欲しいんです。」

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