海の愉快な生き物たちはとても愉快

春雷

第1話

 やあ、みんな。僕はタイのタイ助。見ての通り、タイに手足が生えた謎の生き物さ。そして、タイ助って、ものすごく安直なネーミングだけれども、これが本名なのさ。笑うなら、笑えよ。はははは。

 笑うな!

 さて、今日は僕の愉快な仲間たちを紹介していこうと思うよ。中には人間に獲られたり、行方不明になったりした仲間がいるから、彼らは除外しておくよ。海というフィールドは、実に過酷な環境だから、これは致し方ないことなのさ。

 では紹介していこう。


 まずは、ウツボのウツボ太郎。

 これまた安直なネーミングだが、海の生き物たちの親は安直なネーミングを好む傾向にあるから、仕方がないことなんだ。

 ウツボ太郎はとってもいい奴で、ちょっと怒鳴ればたくさんお金を貸してくれるんだ。しかも、全然返さなくても怒ってこない。つまり、いくらでもお金をもらいたい放題ってこと。最高だね。僕も七十万くらいもらっている。今度買いたい腕時計があるから、また二十万もらいに行こうっと。みんなももらいに行くといいよ。


 続いて紹介するのは、イソギンチャクのイソギンチャクイソ江。

 彼女は絵を描くことが趣味で、どう考えてもぐちゃぐちゃな線のかたまりにしか見えない落書きを、現代アートと称して、みんなに高値で売りつけているんだ。ウツボ太郎は八十枚くらい買わされている。僕も二枚買わされた。だってナイフを突きつけられたんだもの。買うしかないよね。

 ちなみに、僕はその絵をすぐゴミ箱に捨てたよ。


 最後に紹介するのは、ヒラメだかカレイだかわからない、ヒラメ次郎。

 名前的にはヒラメじゃないかという説が濃厚だけれど、実際はわからない。親があえて、カレイなのにヒラメ次郎と名付けた可能性を捨て切れないし、僕らはヒラメとカレイの違いをまったくわかっていないから、もう彼がどっちなのか、全然わからないんだ。

 それに加えて、彼が次男なのかもわからない。名前から推測するに、次男なんじゃないかという説が、牧場のソフトクリームぐらい濃厚だけれども、親が長男や三男なのに「次郎」と名付けた可能性を捨て切れず、真相は藪の中なんだ。

 彼がいったい何者なのか。そしてそれが判明する日が来るのか。もはや誰にもわからない。それは永遠のミステリなんだ。


 以上、愉快な海の仲間を紹介したよ。とっても愉快だったね。次回はもっともっと愉快な仲間を紹介するつもりだよ。とっても愉快だから、愉快な気持ちになれると思うよ。愉快な気持ちで待っていてね。

 それでは、またね。

 さよなら、さよなら、さよなら・・・。

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