45、秋
あまりの涼しさに、涙が出そうになった。
エアコンではない、長らく待った秋の涼しい風。すっと表皮を抜けていくあのさらさらとしたアルコールのような風。
こんなにも心地よいものだっただろうか、と油断すると緩みそうになる涙腺を引き締めて思い起こそうとする、が、春以前の記憶は灼熱に消し炭にされて見る影もない。
きっと、この心地よさもあっという間に凍りついてしまうのだろう。
それならば、今ありったけ浴びて楽しんでおくより他ない。
自転車、足音、通話音、飛行機、咳払い。窓の外の通りから細やかに窓から飛び込んでくる。それら全てが、冷やされ始めた音を立てる。
『11月が来る 11月が来る』
好きな曲が繰り返し頭の中で流れる。そう、10月は何故かやけに短い。
まだ、まだ9月の下旬にしがみつきたいのに。
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