43、暇


「『意味』なんて言葉を作った奴は暇人だ」

 つまみは冷めたポテトフライのみ。そんな“たけなわ”甚だしい酒の席で、彼は深くなった二重をでろりとさせながらそう言った。

「言葉を作った人は忙しかったんじゃないかな」

「必要な言葉を作った奴は、そりゃ必要に駆られていたから忙しかったろうさ。でも『意味』なんて言葉はさ、残業代欲しさに無理やり作り出したモンだよ」

「意味があるから必要だったんじゃないかな」

「必要なことと意味は全然関係ないね」

 私はこういう、誰も手を伸ばさなくなったものを片付けるのが好きだ。しなしなのサラダ、乾いた唐揚げ、パサパサのポテト。どれも、氷で薄まったお酒のお供に最適だった。

「意味なんて、暇から出たうんこみたいなもんだ。意味を求めるのは人間だけなんて言う奴もいるけどさ、地面の上で暇してるカラスが生きる意味を考えていないなんて誰が言えるんだよ」

 幸い、彼のうんこ発言に眉を顰める人はいない。というか、私以外誰も聞いていない。

 こういう意味のない話を聞くのが私は大好きだ。氷で薄まったお酒と、冷たく乾いたおつまみの死骸たち。それらのお供に最適だからだ。


 

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