9、ろうそく
蝋が紙にジュワッと染みていく様子。
紙が不透明性を失ったかと思いきや、少しだけ取り戻す。
ある日祖父の家の倉庫を整理していると、大量のろうそくが見つかった。折れているものや使用されたもの、セロファンで包まれたままの二〇本セットのもの。経年劣化で黄ばんだ靴の箱の中に、これでもかというほど詰め込まれていた。
捨てるのも勿体無いので、同じく大量に見つかった計算式の書かれたノートを持ってきて、ワックスペーパーをひたすらに作ることにする。
祖父はよく計算をしていた。ふとした時、ノートによく何かの数式を書き込んでいた。それがなんの計算だったのか、結局知ることはなかったし、聞いておけばよかったとも思う。けれど、聞いていたところで、どうせ忘れてしまっていたような気もする。
ワックスペーパーは、どうしてこうもジューシーなのだろう、と作るたびに思う。古紙となった祖父の計算式に蝋が染みて、おしゃれなインテリア用品にも、怪しい実験用具にも見えるシートが出来上がる。
おいしそう。
それはそうと、ワックスペーパーは燃やすのが結構楽しい。──すごい勢いで燃えるので、キッチンの流しで、少しずつ燃やすなどの注意が必要ではあるけれど。
祖父の計算式を燃やしてしまうのはなんとなく気が引けて、古新聞で燃やす用のワックスペーパーを作る。
ろうそくならまだまだ残っている。
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