番外編 大規模クラウン"ノア"入団試験 三十三

俺「見知った天井だ。」

一次試験の体力テスト以来だ、この天井を見るのは。

横に目を見やる、椅子に腰掛けウトウトしている。

俺「ユウコ?」

ハッと目を覚ますユウコ

ユウコ「リュウト!」

口に付いたユダレを拭きながらこっちを見る。


ユウコ「あぁ〜、良かったぁ。心配したとよ!そうや、看護師さんに言わないかんね。ちょい待っとって!」

出ていくユウコ、あれからどうなったのか聞きたいんだかな。身を起こし、側にあった昨日待ってきてた水筒から水を飲む。

腹が減った…何か食いたい。

腕を枕にし横になる。


終わった!

試験が終わったんだ!

今なら空に羽ばたける気がする、いやぁこの開放感堪んねぇ!


伸びをしてたらユウコが看護師さんを連れて来た、前回の人とは違うな。

看護師「こんにちわぁ、気分はどうですかぁ。」

リュウト「大丈夫です」

看護師「はい、それじゃぁ私の指を見てて下さいねぇ。」


上下左右前後に指を動かす

看護師「大丈夫そうですねぇ、治癒を施しましたが一応今日は泊まっていってくださぁい。失礼しまぁす。」

そう言い出ていく看護師さん、またユウコと2人だ。


ユウコ「いやぁ〜さっきまで、二人がいたっちゃけどね。今買い出し頼みよっーたい。そうや、串焼き余ってるんちゃけど要る?」

俺「いる!」

無性に何か食べたいんだ、空腹は最高のスパイスとも言うし最高に美味く感じる筈だ。


手渡しで渡される串焼きに齧り付く、肉と塩だけのシンプルなやつだ。

だが、それがいい!肉汁が脳に響く、美味い…!

リュウト「ユウコ…ありがとな(色々と)」

ユウコ「どういたしまして!(肉が)」


二本じゃまだ腹は膨れないが、腹の虫は多少おさまった。

リュウト「ユウコ、あれからどうなった?」

ユウコ「あの後レインって人がシード者になったばい」

リュウト「へぇ〜、結構発表が早かったな。」

まぁ、レインならと思えば不思議じゃない、アイツは今季受験者の中で群を抜いてる。

異常な程にな。


マナ「ユウコさ〜ん、買ってきました〜。」

袋を肩から掛けて入ってくる二人。

マナ「リュウトさん!目覚めたんですね!良かったです!」

リューナ「お大事に…」

俺「ありがとう」

心配は嬉しいのだが、俺の目線は飯に釘付けだ。だって、めちゃくちゃ腹が減ったんだよ!


皿に移した飯をかき込む、胃に広がる確かな満足感。

かき込む、齧り付く、噛み砕く。

リューナ「リュウト、めっちゃ食べる…」

俺「あっ!ごめんリューナも食べたかったかな?」

リューナ「…ちょっと喋りたかっただけ…」


リューナは少し口下手な所がある、小さい頃から一緒にいるマナとは普通に喋れるのだか、初対面の相手の人にはキツイ言い方になってしまうし、少し慣れたらこんなの風な物言いになってしまう。


幼少期に何かあったのか…それとも生まれ付きか?

俺「じゃあ今日の俺の試合どうだった?」

リューナ「…凄かった…途中…もう駄目だと思ったけど…格好良かったよ」

俺「そう〜!」

マナ「私も思いました!途中消えたのでびっくりしましたよ!」

俺「まじで〜!」

奇麗な子に褒められるのは悪くない…寧ろ…イイ…!


ユウコ「う、うちも思ったばい!」

俺「あっ、ども」

ユウコ「何かウチだけ冷たくなか!?」


俺「ハッハッハッ」

リュウナ「フフフフ」

マナ「アハハ!」


今はこの雰囲気に酔おう、明日もユウコの試合がある。


明日は精一杯応援しよう。

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