番外編 大規模クラウン"ノア"入団試験 九

俺「ちょい待てって、お前先に行ったって場所分かんないだろ!?」


ユウコ「あっ!忘れとったわ!」


俺「大人しく、俺と歩いて行こうぜ。」


ユウコ「え〜、早く行きたいちゃけど」


俺「はっはっはっ」


元気な事だ。ユウコといると俺も元気になる、ありがたいな。


俺「そういや、今日何か食べたい物とかあった?」


ユウコ「んにゃ、肉が食えりゃあ何でもよかよ。」


いつもどうりのユウコだ。想定どうりで良かった。


暫し無言で歩く。こうゆう時幼馴染で良かった、無言の間が気まずくないってのは素晴らしいなぁ。


ユウコ「どけん感じの店なん?」


俺「う〜ん、外装はまぁまぁ綺麗で…ちょっと初見さんは入りにくいって感じの店だな。」


ユウコ「常連さんがワイワイしとる感じ?」


俺「そうそう」


初見で入りにくい店に限って美味しい料理があったり、コスパが良かったりするんだよな〜。


ユウコ「そん店って…あれ?」


…良く分かったな。少し薄汚れてはいるものの、不快感というより年季が入ったという印象を受ける店構え。風化ではなく長年の出入りのせいで剥げた木の取っ手の表皮が、今なこの地で愛されてる事がわかる。


俺「何で分かったんだ?」


ユウコ「ん〜、リュウトが入りそうて思ったけん?」


まっ、長年の付き合いだ。そうゆう事にしとこう。




木の取っ手を引き、中に入る。


一仕事終えた常連らしき、おっちゃん達が酒盛りをしている。まだ少し早い時間だが、もう半分埋まってる。これからどんどん人が来るのだろう。椅子がない立ち食い式の店。結構俺が想像した感じの異世界の居酒屋ってかんじだ。


俺「こんちわ〜」


女将?「いらっしゃい、あら連れを連れてるなんて珍しいわね。彼女さん?」


俺「幼馴染っすよ女将さ〜ん。全くやだな〜(笑)」 


女将「ふふふ、ごめんなさいね。じゃあお二人さんごゆっくり〜」


ユウコ「へ〜、よか感じの店やなぁ。」


俺「だろ〜!じゃあ早速何か頼もっか。」


ユウコ「じゃあ、うちご飯頼んどくけん。酒こうて来て!すいませ〜ん!」


俺「へいへい」


あいつ多分肉ばっか頼むな。こっそりサラダ頼んどこ。


俺「麦酒を2つ。大で!」


店員「は〜い、メモするからちょっと待ってね。よし、順番が来るまであっちで並んでてね。はい!麦酒の中、3つの人!」


?「俺の!」


混み合ってるな、少々時間が掛かりそうだ。




俺「お〜い、買ってきたぞ〜」


ユウコ「待ちくたびれたばい!」 


律儀に待ってくれてたのか。


俺、ユウコ「「いただきます」」


ユウコ「美味か!」


俺「お気に召したようでよかったです」


ユウコ「うむ、苦しゅうない」


無言で飯をかきこむ。やっぱここの料理は美味い。


女将「は〜い、サラダの盛り合わせお待ちどおさま」


ユウコ「えっ?まちが…」


俺「ありがとうございます!」


驚愕するユウコ



俺「ユウコ…野菜も食え」




ユウコ「……嫌や〜!」



入団試験コソコソ話

冒険者の多い街では椅子がない立ち食い式の店が多いです。冒険者は頭に血が上りやすい人も多く、壊された際に被害が少なくするためですね。ちなみに壊した人はどっちか悪いとかは関係なく、両方が弁償代を割り勘で払う事が暗黙の掟です。


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