【短編】愛の告白の結果は?【1500字以内】

音雪香林

第1話 愛の告白の結果は?

 高校に入学して、一緒のクラスになった彼に一目ぼれした。


 いつもなら夏休みに入るのなんてすごく嬉しいのに、はじめて「学校がないと彼に会えない」と落ち込んだ。


 親友の絵里奈に励まされ、遊びに連れて行ってもらったりパジャマパーティーをしたり、なんだかんだで最後は満喫してたけど。


 そして新学期が始まって、私は決意した。


「彼に告白する」


 絵里奈に宣言すると「上手く行くように応援してるよ!」と激励のハグをもらった。


 だけど、放課後いざ彼を人気のない校舎裏に呼び出して「好きです」と伝えたら……。


「誰がお前なんかと付き合うかよ。ブス!」


 聞いてすぐはポカンとしてしまった。

 言葉の意味が脳に浸透してこなかった。


 私が呆然としているうちに彼は去って行ってしまって、やっと「フラれたのだ」と理解してからは涙が次々と頬を流れ落ちて行って、立っているのもツラくてうずくまってしまった。


 どれくらい時間が経ったころだろう。

 いつまでも戻ってこない私を心配した絵里奈がやってきて、フラれたと察したのか何も言わずに背中を撫でてくれた。

 私は。


「馬鹿だね、私。綺麗でも可愛くもないのに夢見ちゃって。私みたいなブスが彼に告白するなんて……おこがましかった」


 背中を優しく撫でてくれていた絵里奈の手が止まった。


「は?」


 女の子らしからぬ低音の、どすの効いた「は?」に私はびくっと震えてしまう。

 絵里奈は恐ろしい雰囲気を駄々洩れさせたまま続ける。


「ブスって言われたの?」


 絵里奈の般若の形相と怒りのこもった声に怯えて声が出せずにいると。


「言われたんだね。あの野郎!」


 私はうんともyesとも言っていないのに「ブスと言われた」ことを察知したらしい絵里奈はひとしきり彼を罵倒した後にっこりして。


「よしっ、頑張って今よりもっと綺麗になっちゃお!」


 と、ようやくいつもの優しい絵里奈に戻って私の背を勇気づけるように軽く叩いた。


「見返してやろうって?」


 正直気乗りしない。

 彼のことをもう考えたくない。


 見返すなんて、彼のために努力するようでちょっと嫌だった。

 けれど。


「違う違う。自分を嫌いになっちゃわないためだよ。自分のこと好きでいてあげよ」


 私は彼に「ブス」って言われたとき、ショックだったけど「事実だもんね」と受け入れてしまった。


 でも「ブスだから」ってこれからもずっと内にこもって落ち込んだまま時間が止まったように誰のことも好きになれない、そんな人間にはなりたくない。


 なりたくないと今の絵里奈が思わせてくれた。

 一人だったら「ブス」を言い訳に全部を諦めていただろう。


「そう……だね。今がブスなら、これから努力して綺麗になればいいんだよね」


 絵里奈は満面の笑みで。


「今だってブスなんかじゃないけど、もっと綺麗になったら自分に自信持てるじゃん?」


 これだから絵里奈が好きなんだ。


「手助けしてくれるよね、絵里奈」

「もちろん!」


 さっきまで泣いていたのが嘘のように力が湧いてきて、私は立ち上がる。

 絵里奈は私の片手をそっと握って「帰ろっか」と控えめに引っ張った。


 そうして私たちは明日から「どうやって綺麗になるか」という方法をあれこれ話しながら夕日で茜色に染まる道を歩いて行くのだった。




おわり

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

【短編】愛の告白の結果は?【1500字以内】 音雪香林 @yukinokaori

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

同じコレクションの次の小説