座敷わらし
座敷わらしについて、こんな話がございます。
ある冬の日、子供らが十人集まって雪遊びをしていました。雪だるまや雪兎を作り終え、雪合戦をすることになりました。五人ずつに分かれて雪玉を投げ合います。合戦も白熱を極めていた頃、その場に居た誰もが、子供が一人増えていることに気づいていました。不思議なことに、誰一人として知らない顔がなかったことです。しかしながら、確かに子供の数は十一人であったのであります。
「あ、おかしいな、一人増えているぞ。」
年長の子供が叫びました。すると、一人の子供が慌てた様子で雪原を走っていったのです。みんなは呆気にとられたように眺めていました。子供が忘れていったのか、その場所には一足の雪靴が残っていたそうです。
こんな話もあります。
ある日、子供が学校から帰りますと、母親が買い物に出かけていて、家には誰もいなかったそうです。家の中はいやにしんとしていました。すると奥の座敷から、何やら物音が聞こえてきたのです。それは子供が走り回っているようなおとでした。子供はびっくりしましたが、意を決して奥の部屋へと向かいます。思い切って襖を開けると、そこには誰もおりませんでした。でも確か足音は聞こえます。よく耳を澄ますと、子供の笑い声も聞こえてくるのでありました。驚いた子供は、家から飛び出しました。その後、帰宅した両親にこのことを話すと、それは座敷わらしだと言ってきたそうです。
こんな話もあります。
町の外れに一件の宿屋があります。以前は繁盛していたそうですが、今では閑古鳥が鳴いています。店主は大層頭を悩ませていたそうです。
ある日の夜中、宿を閉めて床につこうと見回りをしていた時のこと、一番奥の客間から明かりが漏れていました。
「はて、まさか泥棒では、」
店主は台所からこん棒を持ってくると、恐る恐る客間に向かい、勢いよく襖を開けます。すると、そこには十にもならないくらいの、着物姿の子供が座っていたのであります。子供はわぁと笑いながら叫ぶと、そのままぱたぱたと走って、どこかへと消えていったのであります。
「それはきっと座敷わらしだ。お前さんの店を不憫に思って現れたのだろう。きっと良いことがあるはずだ。」
店主は近所の勘吉さんからこう言われたそうです。勘吉さんの言った通り、宿屋は程なくして、大層繁盛したそうです。
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