その少年、最凶(サイコパス)につき要注意!~気弱でいじめられっ子の"僕"が自分の中に眠る冷酷無比な"俺様"になって奴らに復讐するまでの物語~

竜ヶ崎彰

0話 プロローグ

ーー僕の名前は最上もがみ凶太郎きょうたろう

都内の高校に通う3年生の男子高校生で17歳。一見普通に見えるけど、僕の私生活は最悪だ。

気弱であるが故に、クラスメイトからパシリやいじめの標的にされたり、「キモイ」「うざい」などの陰口を言われる事が多い。しかも他のクラスメイトはそんな事はしないのもいるけど、僕と同じ目に遭いたくないばかりに助けてくれる事も無い・・・。

それだけじゃない、幼少の頃に母親が死んだ上に父親が失踪してしまい、親戚に引き取られたけどそこでも鼻つまみ者扱い。その親戚も失踪し、今は1人ぼっち…。

今まで生きてこれたのが自分でも不思議なくらいに絶望している。


そんな僕は今修学旅行のバスの中にいた。


そこでも僕は浮いていた…。


周りのクラスメイトはみんなワイワイやっていて、僕は一番後ろの端っ子で静かに座っている…。


ま、それもいいかもね…今だけは何も無くて…。


けど…

その一時の安心は台無しとなった。


「な、なんだ!?」


「うわあああああああああああああああ!!」


突然バスが交通事故を起こしてしまい、ガードレールを突っ切って崖から転落し始めた…。


何!?


死ぬの!?


僕達…死ぬの!?


そう思っていた矢先…目の前に謎の光が差し掛かっていたーー




◆◆◆◆◆




「あれ…ここどこだ?」



僕は気が付くと何処かの穴の中にいた。


穴の中には僕以外にもさっきまで乗っていたバスにいたクラスメイト達全員もいた。


一体何がどうなっているのか訳が分からない…。


僕達は事故に遭ったはずなのに…。


もしかしてここは天国か…?それとも夢を見ているのか?


僕は自分の頬を軽く叩いてみたけど、完全に現実だ…。


現実だと言うならここは何処なんだ?

何で僕達はこんな所にいるんだ?


「ようこそ、選ばれし勇者達よ!!」


なんだ?誰かが僕らを勇者と呼んで話しかけてきた。


僕らは声のした方向である上空を見上げて見ると、そこには美しい容姿の女性が立っていた。


「私はあなた達を導く女神、"ミザエル"です!あなた達はこの世界を救うために私が召喚しました!あなた達はこれからこの世界の勇者として旅をして貰います!」


何を言っているのか良く分からない…。

女神…?

勇者…?

世界を救う…?

この人は一体何を考えているんだ?


そう思っている矢先、僕らの体が何故か光りだしてきた。


周りのクラスメイトはパニくっていった。


「な、なんだ?」


「なんだこれは?なんか力が湧いてくるような…」


「ただいまあなた達には世界を救う為に必要な《スキル》を与えました。皆さん、自身に何か変化があるのに気づきませんか?」


ミザエルがそう言うと、クラスメイト達が色んな能力…というより魔法が使えるようになったのを確認した。


火を放ったり、電気を纏ったり、水を噴射したりなど、どれもすごい魔法ばかりだった。

これがスキルなんだろうか・・・?


「よし!僕も…僕のスキルは…?」


僕もスキルを発動させようと力んでみると、僕のスキルはある意味で驚く物だった…


「なにこれ?"吸引バキューム"?」


僕は与えられた吸引を試してみた。


その能力は本当にある意味で驚きものだった。


なんと、僕のスキルはただ単に周囲の岩や小石をただ吸い取るだけのまるで掃除機のようなハズレものだった…。


「これが…僕のスキル…!?」


「ぎゃははは!」


「だっせぇ!」


「陰キャ君にはピッタリね!」


クラスメイト達が僕を馬鹿にし始めた…。結局僕はこの世界でもこんな扱いされるのか…?

走行しているうちに、ミザエルがまた何か言い始めた。


「では皆さんにはこれから世界を救う為の旅に出てもらいます。旅には様々な困難がありますが、あなた達なら達成できると信じております!それでは、お気をつけて!」


なんか知らないけど、僕も行くしかないかも、よし…早速…!!


僕も旅に行こうと穴から出ようとしたその時だった・・・


「おら!陰キャ野郎はそこでくたばってろ!」


「え!?」


「お前のスキルは使えねえし、いても足手まといになるから邪魔なんだよ!」


そ、そんな・・・僕は置いてけぼり!?


「じゃあね!陰キャ君!せいぜい死なないようにね!」


そう言ってクラスメイト達は僕を置いて行ってしまった・・・!?


そ、そんな!?


「ミザエルさん!僕はどうすれば!?」


「あら~、残念だけど、あなたは運が悪かったって事で!」


運が悪かった・・・?たったそれだけの事で、女神まで僕を見捨てるのか・・・?

そしてついにはミザエルもその場から去ってしまった。


ん?なんだ!?なにか悪寒がしたぞ・・・

振り返ると、僕の背後に無数の獣のような生き物がいた。

見た目は狼だけど、大きさが明らかに僕の知っている狼とは違うほど一回り大きい・・・。しかも動きが速い!!!

それにあいつら、今まさに僕の事を"餌"として見つめている・・・。


「そんな・・・僕はここで死ぬのか⁉」


僕の人生って、結局失敗続きだったのかもな・・・。

産まれてきたこと自体がやっぱり奇跡だったんだ・・・。


「いやだ・・・死にたくない・・・いやああああああああああああああ!!!」


僕はダメ元で吸引バキュームを発動させた。

するとどうなっているのやら…獣を吸い込み始めた・・・。


「なんだ!?どうなっているんだ!?まさか、僕のスキルってこんな大きなものまで吸い込めるのか!?」


ついに獣を吸い尽くしてしまった。


驚きのあまり、固まってしまったが、そんな時間は無かった。

獣がとうとうしびれを切らして、僕を襲ってきた。


「う、うわあああああああああああああああああああああああ!!・・・あ、あれ!?」


なんだ、僕、こんなに足速かったっけ・・・?


驚くことがまた起きた…。

僕の足が速くなった…。

さっき吸収した獣のように・・・・・・?


僕は理解した・・・。


(もしかして、僕のスキルは吸収した生き物の能力が使えるようになるって事なのか!?)


これは逆にすごいかも知れない・・・そうと分かったら、早くここから脱出を・・・


そう思っていた矢先、獣が僕に攻撃をしてきた。


「ぐあ!!」


鉤爪による攻撃をもろにくらってしまった。

痛い・・・背中が痛い・・・切り傷が・・・。


痛みを痛感する暇もなく獣の攻撃は続いた。

仲間を吸収された恨みなのか弱らせてから僕を捕食たべるつもりなのか、容赦なく僕を攻撃してくる。


ああ、なんだ・・・やっぱり僕って死ぬのか・・・せめて彼女くらい欲しかったな…

僕の事を分かってくれる優しい彼女・・・そして童貞も捨てたかったよ・・・。

それに、もう一度お父さんとお母さんにも会いたかった・・・

ああ、なんだろう、なんか頭に浮かんでくる・・・

走馬灯というやつか…

色んな事があったよね・・・

色んな事・・・

いや、違う・・・

これはーー




◆◆◆◆◆





僕の父さんと母さんは、優しい人じゃなかった…。

父さんは家で暇な時はいつもお酒ばかり呑んでいて、何かと母さんに暴力を振るっていた…。

しかも母さんはまるでそのストレスを発散するかのように僕を虐待していたんだ・・・。

このままじゃ僕の命が危ない・・・。そんな事も考えていたが、怯える反面僕の心の中にはある想いがあったんだ。



(母さんが父さんに殺されればいいのに…)



僕は自己防衛の為に、行動を実行に移した。


実行当日ーー

僕は父さんにこう告げた。


「お母さんが、お父さんの事を殺そうとしているよ」


勿論僕の口からでまかせ。嘘に決まってるが父さんはそんな事を知るよしもなく、母さんを殴り込んだ。

殴られた事で母さんはタンスの角に頭をぶつけてしまった。

しかも打ち所が悪かったらしく、母さんはそのまま帰らぬ人となってしまったーー。


小学3年生だった僕はそのまま警察に通報し、父さんは逮捕された。

父さんは「息子に唆された」と言ってDVの罪から必死で逃れようとしていたが、警察は子供の言う事を真に受けず父さんは連行されたーー。

ちなみに父さんはその数日後に殺人の罪による周囲の眼に耐え切れなくなり自殺した・・・。


両親と、暮らせなくなった僕は親戚に引き取られた。

だが、その親戚は僕をと見ていてあまり歓迎されず浮いてた。

居心地が悪くなった僕は、当時その家が相続争いの真っ只中であり、僕はその心理を利用して親戚も父さんの時のように操ってしまった。

僕は全員に嘘を吹き込んだだけで親戚は皆殺し合いに発展、結局は勝手に全員亡くなった。



(そうだ、全部僕がやったんだ、僕がーーいや、が!!)




◆◆◆◆◆




全部思い出したーー。

俺様が邪魔だと思ったやつらを自分で消したんだ。

俺様自身の手で!!


思い出したのも束の間。


獣がまたも容赦ない攻撃をけしかけた。


だが、俺様の敵じゃない!!


俺様は自分の腕にスキルで吸収した獣の魔力を込めた。

そしてそれを獣に向けて放つと、獣に対してさっき俺様がやられたのを同じ技の斬撃を与えることに成功した。


俺様の吸引バキュームは、吸収した生き物の魔力をすべて自分の物に出来るという事を改めて理解した。



気が付くと俺の身体、特に手が血まみれだった・・・。



「あなたなかなかやるじゃない!」



ん?なんだ?

突然後ろから声が聞こえて振り向てみると、さっきのミザエルと似た感じの女がいた。


「誰だあんた?」


「私はミリア!さっきあなた達が話していたミザエルと同じ女神よ!」


「同じ女神?その女神様が俺様になんの用だ?」


「あなた、彼らに復讐したいって思わない?」


何言ってんだこの女は?彼らってのはクラスメイトあいつらの事か?

確かに俺様はあいつらを許せない、俺を置いて行ったあいつらを!


だが、今思うと俺はやつらと一切かかわらないようにしてきたはずなのに…。

あいつらは俺の事も知らずに色々とやってくれた・・・。

そんな奴らならいっその事・・・。


「ああ、俺はやつらが憎い!だから奴らに復讐する!」


「気に入ったわ!そこまで言うなら私はあなたを手助けしてあげる!じゃあ早速、私からも《スキル》もあげちゃうわね!」


「なんだこれ?ヨーヨー?」


ミリアは俺にヨーヨーを10個ほど渡してきた。


「あなたの世界ではこれ、『ヨーヨー』っていうみたいだけど、これはねあなたに合った専用の武器よ!」


「武器?これが?」


ミリアから使い方を聞いて見た所、このヨーヨーの糸は鋭く、物を斬るのに良いとの事・・・。


「気に入ったぜ!」


「さあ、行きましょうか!私は空の上で見守っているからね!」


こうして俺の奴らへの復讐の旅が始まった。


待っていろ!


お前らの運命は俺が絶ち切ってやる!!

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