第3話 姉から学ぶ友達関係
「お姉ちゃん…友達って…何…」
「互いに心を許し合って、対等に交わっている人。一緒に遊んだりしゃべったりする親しい人。だよ?」
「互いに心を許す…か、」
桃香は菜祇咲が辞書をそのまんま読んでるなんて知らずにすごく悩み込んだ。それは菜祇咲もだった。
菜祇咲は小さい頃から苦労知らずだった。勉強もトップで部活も完璧にこなす。友達関係にも悩まされた事はほぼ無い。憧れる人生だ。でも、時々関わり方に不満を持ったり話す内容に疑問を抱いたりする。
「ねえ、お姉ちゃん、咲那恵いるじゃん?咲那恵って友達?」
「咲那恵ちゃんね〜。会った事は無いけど優しそうな子よね〜」
「うん、優しいの。でも友達って言われたら…」
「話してて楽しい?」
「うん。でもたまに腹立つ」
「うん、じゃあ2人で遊んでたら楽しい?青春って思う?」
「青春かはわからないけど楽しい。」
「もし咲那恵ちゃんが困らなかったら学校帰りとか遊びたい?」
「うん。でもやっぱりお姉ちゃんとかと1番いい」
「そっか。お姉ちゃん今めっちゃ嬉し〜ぞ〜!」
「私も〜!!」
2人はニコニコして抱き合った。
そこで菜祇咲は勇気を振り絞るかのように深く息を吸った。
「桃香。今から言う事よく聞いててね。私はね、桃香には咲那恵ちゃんもそうだし、これからできる友達とも仲良くして欲しい。でもね、多分今の桃香じゃ無理だと思う。別に桃香の事を否定するわけじゃ無い。でもやっぱりこの先文化祭とか体育祭とかする中で友達いなくて辛い思いするのは桃香だよ?友達ってどうやって接したらいいの?とか重く考えなくていいの。今度咲那恵ちゃん家に連れてきてよ。会いたい!明日からは桃香は友達との向き合い方とか、咲那恵ちゃんに相談したりしていいし。頑張りなさい。桃香ならいける。」
桃香は涙ぐんでいた。
お姉ちゃんがここまで考えてくれている。お姉ちゃんが助けようとしてくれる。そしたらもっと涙が出てきて菜祇咲の服はびしょ濡れになった。
「桃香泣き過ぎ〜笑」
「だって〜泣」
「明日から頑張れる?」
「無理だよ〜!!」
「何で?!」
「この間澪奈の誕プレ買いに行った時にイケメン双子に会ったんだけどー転校してきて2人とも隣の席になってドキドキなの〜!!」
「それを早く言いなさいよ、てっきり友達いらない宣言するのかと思ったじゃん、」
「ごめんなさい…」
「とりあえず明日家に誘いなさい?お姉ちゃんが魔法かけてあげるから〜」
「うん…!」
「おーきてっ!」
「澪奈うっさい…」
馬鹿でかい澪奈の声に起こされた私は少し強い太陽の光に手を当てながら独り言のようにボソッと呟いた。それは澪奈には聞こえなかったようで、私が寝ている前提で話を続けていた。
「双子のイケメンが家の前にいて、桃香ちゃんいますかって!!」
それを聞いた途端、いきなり目が覚めた。
「名前は?」
「知らない!!」
桃香はとりあえず制服に着替え髪の毛を整え外に出た。
「あ、桃香ちゃんおはよ〜」
「おはよ〜じゃ無い…!!こっちは迷惑なの!」
「迷惑じゃ無いって思ってる人がいるみたいだよ?」
空にそう言われ桃香は後ろを振り向いた。そこにはニコニコの姉がいた。少し顔が赤くなっていた。
「桃香〜まさかそんなにイケメンのお友達がいたとはね〜!お姉ちゃん嬉しいよ〜」
「こんにちは。同じ学校の森山空と言います。」
「森山翼です。」
「こちらこそ桃香がお世話になってます〜桃香、一緒に行ってきなさい」
「やだ」
そう言いダッシュで逃げ出した桃香は少しすると止まった。息切れをしていてもう体力がない様子だ。
「もう…こない…よ…ね…?」
「ざんねーん。僕たちまだまだ体力あるし、息切れもしてないよ?」
その言葉の通り、2人とも息切れどころか爽やかな顔をしていた。まるで逃げるのを諦めろと言うように。
「それに桃香ちゃんが綺麗にしてる前髪もうすぐ崩れそうだよ…?早く学校行って直さなきゃじゃない?」
「確かに…!でもアイロンも何も…」
「翼、友達に美容系の子いるから一緒に学校行ったら直せるよ?」
「はい…」
まるで初めからそうなるように仕組まれていたのかのように桃香は2人と登校することになった。
学校に近づく度、桃香が想像していた景色が実現してしまった。さすがに双子のイケメンと登校したらみんなに見られる。
桃香はずっと俯きながら歩いていた。翼はそれを黙って見ていた。
「桃香!おはよ〜!!」
「おはよ…」
「どした?疲れとるね、だいぶ」
「マジで…昼休み屋上来てくれる…?」
「いいよ!!」
(良かった…教室には別々に入ろうってお願いして…)
数十分前
「桃香ちゃん、今日宿題s…」
「教室には別々に入るからね…??」
「そんなにダメ…?」
(今までの女子は全員これでいけた…)
でも、桃香の顔はどんどん怒りへと変わっていた。
「あのね…あんた達にどう思われてるかわかんないけど………私は小さい頃から思ってる男子がいるんだよ………」
その声には寂しさも含まれており、悲しさや怒りも含まれていた。
そしてその声に2人は何も言葉を発せなくなり、桃香は1人教室に向かっていた。
昼休み
「桃香ーどうしたん?」
「お姉ちゃんに咲那の事言ったのよね、じゃあ家に来ないかって。家に来いって。言ってたけどどうする?」
「え?私怒られるの??」
咲那恵は不思議に思い、焦り始めた。
「ううん。なんかね、会いたくなったって。毎日咲那の話してるから。」
「それもそれで恥ずかしいけどね…」
照れながら嬉しそうに笑う咲那恵を見て、本人よりも桃香が1番安心していた。
これで一件落着、と咲那恵に聞こえない声で小さく呟いた桃香は一緒に教室に戻って行った。
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