第43話 七つの大罪人
ジュン・キャンデーラがリュマ・ブルヲと邂逅したのと同時刻。
光の国シャニースでは、極秘の会談が開かれていた。
――シャニース。
魔人殺しと呼ばれた賢者ゲンジによって1000年前に建国された。ゲンジの永続魔法「パライソ・ガラクシア」によって、夜であっても、光り輝く首都モロボシが有名。現・国王は、ゲンジの末裔ジャニス・キタガー。絶対王政の独裁国家として名高く、国内固有の身分階層(カースト)がある。特にジュニアと呼ばれる奴隷たちは、若いうちから性的に消費されている。同性愛を支持しているのも特徴的。
そのシャニース国首都モロボシの中心地に鎮座するシャニース宮殿の最上階、白金の円卓の間に、各国の首脳が列席していた。
「それにしても、ヨシモルトさんのキャンデーラ征伐、誘ってほしかったですわ。想像しただけで、ぐしょぐしょになってしまいましたもの」
国のトップが居並ぶ重苦しい空気のなか、口火を切ったのは、恍惚とした表情でぷっくりとした分厚い唇を舌なめずりする、青い鱗の、蠱惑的な美貌の半魚人(マーマン)。
名前はサリナス・ズーキ。海上の国ウォダィヴァの女王。
「やかましい半魚人(マーマン)風情が。焼き魚にして喰ってやろうか?」
「あら、私のぬるぬるおっぱいをむさぼりたいってことでよろしくて?」
「文字通り喰うって言ってんだ。ったく、腹が減って仕方ねえ。シャニースは、主賓に飯も出さねえのか?」
そうぼやいて片足を円卓に乗せ、貧乏ゆすりをするのは、筋骨隆々とした土色の肌が特徴的な豚獣人(オーク)の大男。
タマキン・ユーウィ・チロー。豚獣人(オーク)の国デヴの国家主席。
低能なオークの出でありながら、ある女賢者を孕ませて生まれたこともあり、優れた頭脳を駆使し、若かりし頃、法の国ガタチョーナで法律の勉強をした。そののち帰郷すると、国を興し、独り善がりで理不尽な悪法を広めて、独裁国家の元首に君臨し、今に至っている。
「うっさいじゃんゴミども!!!貴様等矮小かつ無価値に等しい下等種族が、わが物顔でこの場でくっちゃべってるのが気に入らないじゃん!死ねじゃん!死ねないなら殺してやるじゃん!!」
痴話喧嘩気味のサリナスとタマキンに割って入るように叫んだのは、竜人の国ウォーロンの国王、ダハラ・クーセッカス。
竜人の身体的特徴である爬虫類の鱗には、般若の入れ墨が彫られており、玉蜀黍のヒゲのような金髪は、怒り散らす本人の性格を象徴するかのように逆立っている。
「耳障りだのう。皆わらわが許す。早ぅ死ね」
深紅の口紅を動かし暴言を吐いたのは、気品漂う高飛車な、女鳥獣人族(ハーピィー)の女傑。孔雀のような爛々とした煌びやかな羽根を毛づくろいしている。彫りは深く、ハーフのように鼻は高く、目は青々としている。
彼女こそ、乙女の国エノンの女宰相・ヴェッキー・ゲスフーリンであった。
「うーん、ヴェッキーさんは相変わらず魅力的ですね。貴女を抱けるオスが羨ましい、かつ妬ましいですね」
「色呆け爺が。わらわを抱こうなどとは、100年早いわ」
「100年でいいんですか!?では、100年後、ぼくの金棒を突っ込ませてくださいね。これは約束、かつ誓いですよ?」
「……言葉のあやというのもわからぬとは」
「鬼楽しみです」
ぐふふ、とほくそ笑む鬼人族(オーガ)の老人、赤鬼のトール・アームローは、赤ら顔が、更に上気して赤々としている。鬼人族の長老かつ族長として、鬼人の国フルーヤ代表として列席していたのだった。
「羨ましいといえば、巨人族のあなた、失礼ですが、お名前は?」
「あ?俺はモーヴだ。モーヴ・プルプルヌイ」
「そうそうモーヴ様。あなたですよね、キャンデーラの売り飛ばされた奴隷たちをいち早く市場で買い漁っているのは。嫉妬かつ嫉妬です」
「最高だぜ?国を奪われ、平和と人権を奪われた女の口淫からしか摂取できない栄養がある」
「うーん、独占はいただけませんね。その口淫かつ生挿入、我がフルーヤ国にも分けていただきたい」
「めんどくせえからヤだ(笑)」
そう、ゲラゲラ拒絶する巨人族の大将、モーヴ・プルプルヌイ。13mをゆうに超える巨躯を揺らして笑う為、円卓にもその振動が伝わる。くすんだ灰色のくせ毛が、天井をかすめる。
「巨人の笑い声は実に不愉快だのう。自害せえ」
「だるいから却下だ。悪いな鳥女(笑)」
「つうかつうかつうかジャニス!!!!早く話を始めろじゃん!!!!!いつまで待たせるじゃん!?これ以上待たせるようなら滅ぼしてもいいじゃん!?」
しびれを切らした竜人の王が、円卓の対面で、にこにこと人のよさそうな笑みを浮かべているニンゲンの男を責めた。
「ミーは、場所をセッティングしただけだヨ。今日ユーたちを集めたのは、今から来る、クレイジーさ」
「「「「「「??????」」」」」」
独特な口ぶりの、シャニース国王・ジャニスの一言に、呼び集められた七人の首脳が困惑していると、円卓の間の大扉が音を立てて開いた。
「「「「「「!!!!!!!!」」」」」」
そこに現れたのは、先のキャンデーラ征伐という歴史的事件を引き起こした、ヨシモルト興業の二大看板、マッジャム・グァキノツカヒと、ハムァダ・フレンチクールラであった。
「集まってるなぁ。この全知全能の神に選ばれた、世界一幸運な愚民たちよ」
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