悪夢の朝に

りお しおり

第1話

 目が覚めると、隣に夫はいなかった。


 体を起こすとベッドの上には血に濡れた包丁があり、私の手も血に汚れていた。


 悲鳴は声にならず、ひゅっと息が漏れただけだった。


 心臓が早鐘を打つ。うまく呼吸ができない。震える体でどうにかベッドをおりて寝室を出た。


 リビングを見、キッチンを見る。

 しんと静まり返っていて、何もいつもと変わらない。


 少しドアの開いたままのトイレものぞいてみても誰もいない。


 扉の開いたままの洗面所を外から見ても、そこにも誰もいない。


 震える手で閉まったままの浴室の扉に手を伸ばした――――





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