病室の向日葵

目が覚めて 最初に思い出す

昨日の君の 最後の笑顔

「まだ別れじゃないのに」

僕の言葉に 曖昧に頷くんだね


慣れすぎた 白塗りの天井

静かに始まる 今日一日

硬いベッドに腰掛けて見る

カーテン越しの 向日葵の花


生きていく理由を求め すがりついても

時の流れに薄らいでいく

生きる理由も無い でも死ぬ理由も無い

壁の中 ただひたすら叫ぶよ


出来ることなら どうか神様

僕達だけの 物語をください

祈る 先の知れた 僕の未来

夏の日差しに当たる向日葵を見て

君は悲しそうに笑った


夕方の風 「さよなら」と言う君

今日最後の 君の笑顔

あと何回見れるかな?

ベッドの上 静かに目を閉じる


小さく聞こえた鼓動の音 そっと触れる

消えていく感覚の怖さ

生きるのも辛い でも死ぬのも怖い

暗闇の中 ただ一人で泣くよ


出来ることなら どうか神様

僕達だけの 居場所をください

願う 最期を知った 僕の今

冷たい風に吹かれる向日葵を見て

君は寂しそうに笑った


僕達に残された 僅かな時間 あとどれくらいあるの?

小さな呼吸が喉から零れた

左胸に手を当てて 目を閉じる


怖いよ 生きていたいよ 君と居たいよ

ねぇ 君は何処に居るの? 僕は見えているの?

君と生きていたいよ


病室に飾られた向日葵が 静かに揺れた


出来ることなら どうか神様

大切な人の笑顔 奪わないでください

最期の時 知って募る恐怖

カーテン越しに揺れた向日葵が

小さな歌をくれた


慣れたベッドの上 君の泣き顔

触れた手の温もり 忘れないで

「ありがとう」と言う 震える君の声

夏の窓に揺れる 君の好きな向日葵

僕に笑顔をくれたんだ


つられて笑う君 最後の笑顔

泣き顔だったけど 何処か嬉しそうだね

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る